“マザーキラー”と呼ばれる子宮頸がん 亡き妻からの言葉で絶望から立ち直ったバルーンアーティスト
妻が残した言葉から目指したバルーンアーティストの道
ヤスコさんが亡くなってから1か月。ヤスコさんを失った悲しみがタロウさんを襲った。「亡くなってから1か月は意外と冷静な自分がいた。でもそこから『本当にヤスコはいないんだ』って思い始めて、死にたいって思うようになった」とタロウさんは当時を振り返る。そして後悔の気持ちが湧き出てきた。「あの時ありがとうって言えばよかった。もっとヤスコと話をすればよかった。毎日、こんなことばかり考えていました」 失意のタロウさんは、気を紛らわそうと趣味を探していたところ、偶然バルーンアートと出会った。習得した技を友達に披露するとみんなが喜んでくれた。その時、ヤスコさんの言葉をふと思い出した。「タロウさんには人を喜ばせることが合っているよ」 そして、タロウさんはバルーンアーティストとして活動していくことを決意した。10年近くが経ってもヤスコさんを失った悲しみは消えることはなく、どうしようもなく落ち込むこともあるという。それでも「悲しみと共存すればいいやって思うと気持ちが軽くなった」とタロウさんは言う。 生前、誰かの役に立ちたいと話していたというヤスコさん。「ヤスコが叶えることができなかった夢を、バルーンアーティストとして活動して夢を叶えたい。バルーンを通して笑顔を届けたい」と、タロウさんは笑顔で語った。
出産年齢を襲う“子宮頸がん”
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで生じるがんだ。HPVはどこにでもいるウイルスで、皮膚などにも存在する。HPVに感染しても、ほとんどは自然に消えるのだが、一部の人でがんになってしまうのだ。HPVの感染経路は、主に性的接触によるもので、女性の多くが一生に一度は感染すると言われている。 日本では、子宮頸がんの罹患者は20代から増え始め、罹患率は30代後半にほぼピークに達する。つまり、子作りを検討する年齢でも罹患しやすいがんだということ。この点が子宮頸がんの特徴である。
高い予防効果が期待されているHPVワクチン
冒頭にも書いたが、日本では多くの人が毎年、子宮頸がんによって命を落としている。 そんな子宮頸がんの予防に有効なのが「HPVワクチン」だ。日本では、小学6年から高校1年相当の女子が公費によって接種を受けることができる。HPVには200種類以上の遺伝子型があるが、子宮頸がんの原因となるタイプは少なくとも15種類ある。最新の9価ワクチンでは子宮頸がんを起こしやすい7つの遺伝子型について感染を防ぐことができるため、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐことが期待されている。 また、感染予防効果を示す抗体は少なくとも12年維持される可能性があることがこれまでの研究で分かっている。つまり、公費での接種対象期間に接種を受ければ、妊娠を考えるような時期まで予防効果が続くとみられるということだ。 9価ワクチンについては、一定の間隔をあけて6か月のうちに3回摂取を受ける必要がある。(15歳までに初回接種を受けていれば、6か月のうちに2回の接種でよいとされている)