「社長になりませんか?」は闇バイトの可能性…最近増えている「怪しい会社設立」の相談【司法書士が注意喚起】
この問い合わせの「目的」とは?
では、この問い合わせは何が目的なのでしょうか。筆者としては、3つほど考えられるのではないかと思います。 (1)株式会社設立費用のマーケティング調査 (2)反社会的勢力のフロント企業設立 (3)マネーロンダリング まずは非犯罪的な目的として、株式会社設立費用のマーケティング調査が考えられます。設立にどれくらいの費用がかかるかも含めて全国的に問い合わせが届いていますので、株式会社の設立にかかる司法書士報酬を調べるためにどこかの業者が送っている可能性があります。ただ、もしそうなら、問い合わせ主が印鑑証明書まで送ってくることは考えられません。 対して、犯罪に絡む部分が大きいのではと考えると、反社会的勢力のフロント企業設立を目的としている可能性もありそうです。また、新会社の設立にしては資本金がそこそこ高額であることから、いわゆるマネーロンダリングを目的にしている可能性も考えられます。 ここで、会社を設立する際になぜわざわざ司法書士を通すのか、フロント企業の設立やマネーロンダリングが目的なら自分で設立手続きをすればよいのでは?と思う人もいるでしょう。 司法書士を通す理由は、「司法書士を代理人にするほうが都合がよいため」と考えられます。 株式会社の場合、定款を作る際に公証役場で反社会的勢力ではないかどうかを確認(=反社チェック)します。反社チェックでは、発起人が公証役場に直接出向いてやり取りを行わなければなりません。 実際に反社会的勢力による会社設立であると仮定した場合、発起人や代表者になる人は「一般人」ですから、その印鑑証明書等が反社チェックに引っかかる可能性は低いでしょう。ただ、一般人が公証役場に直接行くと対応が難しい場合があります。 例の問い合わせでは、「メール等のやり取りだけで本人確認をしてほしい」と要望しています。もし要望どおりの方法で本人確認を済ませれば、あとは司法書士が公証役場に赴き、反社チェックのやり取りを行いますから、スムーズに進められるというわけです。 またマネーロンダリング目的の場合においては、司法書士が代理人となって定款を作ることで、資金移動の際に金融機関から怪しまれにくいと考えているのではないでしょうか。このような理由から、わざわざ手数料を払ってでも、司法書士に代理を依頼しようとしている可能性があります。