会社を“売る”中小零細が急増 後継者不在でМ&Aに脚光「社員が元気になった」企業買収のリアル
■М&Aの障壁
一方で、M&Aがうまく行かなかったケースも多々ある。理由は様々だが、売却額の算定は大きな障壁となる。 (上田純也税理士事務所 代表税理士 上田純也さん) 「М&Aの場合、株を全部買い手企業に売却して経営権を渡すというやり方が主流だが、会社の価値の算定が問題となる。経営者の希望する価値と実際の計算結果には開きがあることもある。黒字の会社であれば、利益の何年分の価値を計算結果に乗せるか、などの交渉になる。また、М&A前に社長の退職金を払うか払わないかなども細かな決め事ではあるが、税制上のポイントになることもある」 事業承継をめぐっては、その方法によらず税務的な観点でもクリアするべきことが多く、税理士が相談の受け皿となることも多い。 また、「従業員の反発」により破談になることもある。一般的に、M&Aを模索していることは、売り手の企業内ではトップ以外の役員や従業員には伝えない方が良いとされている。社員からの反発によって、事が進まないことがよくあるからだ。実際、買い手企業も見つかり、契約締結まであと一歩のところで、トップが役員らに状況を伝えたところ猛反発に遭い、M&Aの話を白紙に戻さざるを得なくなった事例もある。
■M&Aをめぐるトラブルも増加 国が監視強める
М&Aをめぐっては、悪質な仲介業者や買い手企業によるトラブルが目立ち始めている。契約の締結後に買い手側が契約通りに事業を行わず、資金を抜き取ってしまうこともあるという。 また、仲介業者をめぐっては、悪質な業者が「不透明で高額の手数料体系を提示する」「強引でしつこい営業を行う」「今後も顧客となる可能性がある買い手有利の条件を提示する」ことが問題となっている。こうした状況に、国は、悪質業者への対応に乗り出す方針を示している。 (東京商工リサーチ 情報部 藤本真吾さん) 「業界ルールの厳格化や公的な枠組みとの組み合わせを積極的に進めていくことが必要で、売り手側は他の仲介業者からセカンドオピニオンをもらうなどすることが重要」 (上田純也税理士事務所 代表税理士 上田純也さん) 「必ずしも会社の顧問税理士が事業承継に精通しているとは限らない。大きな契約になるので、事前にリスクを排除する観点は必ず必要になってくる。中小企業庁の事業承継ガイドラインの確認や問題に精通した専門家に意見を求めることが重要」
■国内企業の社長の平均年齢は63.02歳、60代以上の構成比が6割超
東京商工リサーチの調べでは、2022年時点で国内企業の社長の平均年齢は63.02歳。2009年に調査を開始して以来初めて60代以上の構成比が6割を超えたという。後回しにすればするほど、後継者不在が経営に与えるリスクは高まっていく。 「なんとしても雇用は守りたい」経営者の切実な思いに、М&Aは“最良の一手”ともなりうる。一方で、日本では“身売り・乗っ取り”のイメージが未だ色濃く、経営者の決断が傷つかないよう保護する仕組み作りも道半ばだ。(取材報告:読売テレビ報道局 金崎浩)
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