10万ドルが退職時には数千万ドルに…それでも「S&P500一択はやめろ」という理由【ウォール街・伝説のブローカーの助言】
この投資に並ぶものはほとんどない…「S&P500」の魅力
私は世界最大の投資ハックについて――ジャック・ボーグルという男がいかにしてS&P500を投資可能な金融商品に変え、それを噓みたいな低コストで個人投資家が利用できるようにすることで、投資信託業界の足をすくったか――説明したところだった。この投資に並ぶものはほとんどない、と。この点を強調するために、私は彼らに図表を見せた。 これは、アメリカの債券市場のリターンをS&P500と過去百年にわたって比較したものである[この表は財政状態が良好で債務不履行のリスクが比較的少ない政府や自治体、企業が発行する投資適格債券を対象としている。品質の低い債券はジャンク債と呼ばれ、財政状態が比較的弱く債務不履行のリスクがずっと高い企業が発行したものである。この高いリスクを埋め合わせるため、ジャンク債は投資適格債券よりもずっと高い利息を支払わざるを得ない]。 S&P500と債券のトータルリターンの比較結論(図表)は明確だった。長期的には、アメリカ最大の500社に投資することは、投資適格債券に投資するよりもずっと儲かる。リターンの差は一年当たり平均7.5パーセントを超える。 私は愛しの通訳者を通じてフェルナンドとゴルディータに言った。「ちなみに、長期複利を考慮すると7.5パーセントは大きな差を生む。例えば、君たちのような年齢と収入レベルでは、退職する頃には虹の彼方に数千万ドルが待っているなんてことが簡単にできる」クリスティーナは突然通訳をストップし「本当に?」と聞いた。 「もちろん本当さ! 必要なのは少しの忍耐……いや、大変な忍耐だ。大金を作るにはね。でも、10万ドルで始めて、毎月1万ドルずつ追加するなら(どちらも彼らの予算内におさまる)、三十年後には1300万ドルを超えるし、四十年後には4000万ドルを超える」私の言ったことを彼女が理解できるようしばし間を置いた。 「もちろん、これはS&P500がこれまでの長期平均を今後も維持すると仮定した場合だ。だが、過去百年間達成してきたことを考えたら、それが続く可能性はかなり高いと思う」 「ひゃー、そうなの」とクリスティーナは感心して言った。「私たちもそれをやっているんでしょうね?」。そして彼女は肩をすくめて私が今言ったことを通訳し始めた。間違いなく、彼女は見事に通訳した。なぜなら、十五秒後、フェルナンドはゴルディータに向かってスペイン語で言ったからだ。 「それだ! 他のデタラメとはおさらばだ。前に進もう。俺たちの金は全部S&P500に突っ込むぞ」。そして彼はゴルディータに自信たっぷりの笑みを投げかけた。ゴルディータはそれを受けて「この目で見ないことには信じられないわ」とでも言いたげに目をグルグル回し、肩をすくめた。