【コラム】AIが人類を滅ぼす日!?…イギリスの「リーダーシップ教育」とは【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
■「公共福祉に役立つ=社会で活躍」リーダーシップ教育の原型
ちなみに、もっとも厳しいのは「ヘッドマスター・アテンション」で、校長室に呼ばれて直接、罰をくだされるというもの。これは“イエローカード”に等しく、3回もらうと問答無用で退学なのだそうだ。 小学生にそれは厳しすぎるのでは…と思っていたら、なんと、最近、それを2人の生徒がもらってしまったのだとか…。1人は英語の汚い言葉である「Fワード」を使って友達をいじめた子。もう1人は、アジア系の友達を「イエロー」とののしったのだそうだ。
共通するのは、いじめや差別、偏見に対する絶対的な「NO」だ。「たとえふざけていたのだとしても、人を傷つけ、悲しませるようなことを言ってはいけない」という強いメッセージを感じる。 食事の時間には、各テーブルに教師がついてテーブルマナーをうるさくチェックする。まだあどけない「Year1」(幼稚園の年長に相当)の子どもが「Could you pass me the salt, sir(塩をこちらにいただけますか)」などと言っているのを見たときには度肝を抜かれた。 食事中は会話を楽しむのがイギリス流。だが、ふさわしくない話題の時は、先生がきちんと方向修正するのだとか。将来の英国紳士を育てる「ジェントルマン教育」というだけではない。単に礼儀をしつけるだけでなく、これは「リーダーシップ教育の原型」なのだという。 イギリスで13歳から18歳までが寄宿舎で生活する名門校を「パブリックスクール」と呼ぶが、これは公立学校ということではなく、「開かれた学校」という意味だ。中世ヨーロッパで王族や貴族、裕福な家庭出身の子弟だけにギリシャ語やラテン語を教えていた、特権階級だけの閉ざされた学校から、誰にでも開かれた学校へ――。イギリスでは、公立学校は「State School」、私立の学校は「Independent School」と呼ぶ。パブリックスクールは後者の私立学校の1割ほどを占めていて、その定義は明確ではないのだが、共通する理念は「公共の福祉に役立つ子ども、すなわち社会で活躍する優秀なリーダーを育てる」というものだ。