イギリスは「アメリカとEUのどちらかを選ぶ必要はない」 スターマー英首相が演説
イギリスのキア・スターマー首相は2日、ロンドン市長主催の夕食会で外交政策に関して演説し、イギリスの同盟国のどれかをとりわけ支持することはしないと強調した。 ロンドン市庁舎ギルドホールで開かれた毎年恒例のこの夕食会では、首相が国際問題についてスピーチするのが恒例となっている。 労働党のスターマー首相は、長年政権を担ったのちに今夏の総選挙で下野した保守党が「世界に背を向けてきた」と批判。自分の政府はアメリカと欧州連合(EU)の両方と関係を強化すると述べた。 また、現在は「危険な時代」だと強調。安定こそ成長に欠かせないとし、「不安定で、ますます必死になっている侵略者」のロシアと戦うウクライナを支援し続ける必要があると訴えた。 そのうえで、「安全保障なくして成長なし。そして、同盟なくして安全保障なしだ」と述べた。 ■「両方との協力が必要」 スターマー首相は演説で、イギリスが今後「世界の舞台で堂々と立つ」ことになると説明。 「この危険な時代を背景に、同盟国のどれかを選ばなくてはならないとか、アメリカかヨーロッパのどちらかにつくという考えは、まったく間違っている」と述べた。 そして、「その発想を私は完全に拒否する。(労働党の元首相、クレメント・)アトリーは特定の同盟国を選んで味方したりしなかった。(保守党の元首相、ウィンストン・)チャーチルも選ばなかった」と述べ、「国益のために、(アメリカと欧州の)両方と協力することが必要だ」と主張した。 首相は、米ニューヨークで9月にドナルド・トランプ次期米大統領と会談したことについても言及。「今後、大西洋をまたいだアメリカの友人たちとの絆に、かつてないほど大きな投資をしていく」とトランプ氏に伝えたとした。 スターマー氏はまた、「ヨーロッパとの絆の再構築」に力を入れる考えも強調した。 ■ウクライナ支援の重要性を強調 ウクライナ支援については、「私たちの自身の利益に深くかかわることだ」と主張。「ヨーロッパの自由の未来が、今まさに決められている」からだとした。 そして、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が勝利すれば、「私たち自身の安全、安定、繁栄」が損なわれると説明。イギリスは今、「国益のために世界の舞台でより強く戦うと決意を固めているし、国益を守るためにもっと努力する用意がある」と述べた。 そのうえで、「だからこそ私たちはウクライナを支援し続けなければならないし、ウクライナの自衛を支えるため、必要なことを必要な間だけ、続けなくてはならない」とした。 さらに、同盟諸国への支援は、アトリー元首相やチャーチル元首相がしていたことだとスターマー氏は説明。「英雄にふさわしい国」を建設するという、1945年のアトリー政権が掲げた大志に思いをはせているのだと話し、次のように続けた。 「(アトリー政権は)国外で私たちの力を維持することが、国内での成功の土台になると考えた。それは、当時と同様、現在も同じだ」と述べた。 スターマー氏はまた、今こそ「安全保障を強化する」時だと強調。安全保障は「経済の基盤であり、私たちが大切にしているすべてを究極的に保証するものだ」とした。 一方、保守党のナイジェル・ハドルストン共同幹事長は、スターマー政権こそ、5カ月前の発足以来「私たちの国を後退させた」と主張。 「景況感を記録的な低水準まで低下させ、労働者を税金で罰し、成長予測を大幅に悪化させ、イギリスの海外利益を外国に手放そうと躍起になっている。(首相が)必死のリセットを余儀なくされているのは当然のことだ」と述べた。 (英語記事 Starmer: UK does not need to choose between US and EU)
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