山奥で紡ぐ幸せのパン「ウルーウール (heureux heure)」(滋賀県甲賀市)
山奥で紡ぐ幸せのパン「ウルーウール (heureux heure)」(滋賀県甲賀市)
関西にはたくさんの有名なパンのお店があり、特に京都・大阪には名店ぞろい。そんな関西方面で、パン好きだけではなくお菓子好きにも話題のお店が滋賀にあります。それも滋賀の中心部ではなく、滋賀県甲賀市の里山に。そのお店の名前はパンとお花のお店「ウルーウール (heureux heure)」。今回、店主の橋本シェフにお話を伺うことができました。
辺境ともいえる山奥で幸せをパンで運ぶ
お店があるのは、滋賀県の南東部の甲賀地域にある甲賀市(こうかし)。滋賀県の草津からは車で約30分程度の場所にあります。店名の由来は「La faire heureux heure“ラ フェール ウルー ウール“」。フランス語で“しあわせな時間を作る”を意味します。淡いブルーの色合いがかわいらしいこのお店は、パンを旦那様である橋本シェフが、お花をフローリストである奥様 橋本夏美さんが手掛けるお店。このかわいらしい色合いは奥様が手掛けたのだとか。またこの場所は、もともとは奥様のご実家とのこと。中に入れば、どんどん焼きあがるパンがズラリ。パンだけではなく、焼き菓子や冷蔵ショーケースには旬の食材を使ったタルトやサンドイッチが並びます。ちょうど取材した時期は秋口だったので、シャインマスカットのタルトが並んでいました。またお店の背面には奥様の作品であるドライフラワーアレンジメントや生のお花も。橋本夏美さんは通販会社のカタログ撮影のスタイリングや、web書籍制作、カレンダーのお花を担当するなど様々な経験。今はこの場所で、お店が定休日の日に“花を親しむライフスタイル”を提案しながら、毎月気軽にお花を楽しむ様々なアイディアを伝えるフラワーレッスンを開催されています。フローリストとして有名な奥様。旦那様である橋本シェフの経歴も目覚ましいものがありました。
フランスの宗教的な伝統菓子「ガレット・デ・ロワ」日本チャンピオン
橋本シェフは滋賀県のクラブハリエのベーカリー部門にて勤務の後、ハイアットリージェンシー京都へ。2008年には北米ワイルドブルーベリー協会主催のコンテストにてシュトーレンのレシピで優秀賞を受賞。その後、2011年にここ甲賀市にアトリエを構えました(ウルーウールの前身)。奥様の教室に通う方々へ、パンを作りをしているうちに地元で話題になり、2014年には「ウルーウール」として屋号を変更し、パンの販売をスタート。そして2017年、『クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ』が主催する第15回ガレット・デ・ロワコンテスト一般部門にて優勝し、フランス大会への参加権を得ることに。2019年、Chambre professionnelle des artisans boulangers-pâtissiers主催のフランスで開催される2019年ガレット・デ・ロワコンクールへのエキジビションに参加し、日本人の歴代順位で上から二番目の7位に入賞。経歴だけ見ても、素晴らしいキャリアを持つ橋本シェフ。特にこのガレット・デ・ロワはとある映画の影響が大きいと話されます。橋本シェフ「ベーカリー勤務時代からガレット・デ・ロワというパイ菓子への興味はすごくあり、そこから15年経ち『洋菓子店コアンドル』という映画を見ていて、最後の方にガレット・デ・ロワが登場してから“憧れ”みたいな気持ちからガレット・デ・ロワに傾倒し始めました。当時は、ガレット・デ・ロワをインスタグラムに投稿して、みんなで見せ合うみたいな流行もパティシエやベーカリーの職人たちの間であったので(笑)。ガレット・デ・ロワは焼きが浅めなトレンドのときもあれば、強めのトレンドの時期もあったり、その奥深さがとても面白いですね。」これまでガレット・デ・ロワを食べてきた中で、橋本シェフのガレット・デ・ロワは、パイ生地がとにかく軽やか。そして中のダマンド(アーモンドクリーム)がたっぷり肉厚でボリューミー。そして香りとして最もインパクトがあったのが、小麦の香り。そしてそこから追いかけるようにアーモンドとラム酒の香りが鼻を突き抜けるように広がります。ベーカリー出身の橋本シェフが作るこそ、小麦の力強さと少し浅めな焼きの塩梅が絶妙で、パイ生地のクラスト感も最高に美味しくいただけました。毎年販売しているガレット・デ・ロワは全国配送もしているそうで、オンラインで注文することも可能とのこと。またガレット・デ・ロワいえば、フェーヴ。信楽焼の作家さんにお願いしてフェーブを毎年その年の干支を作ってもらっているそう。