側近も記者も想定外だった 川勝平太前静岡県知事が突然辞職表明 地元紙記者が2024年の政治を振り返る(上)
過去にも数々の「差別」発言
宮嶋: 市川さんが担当する前に僕も県政の取材を担当していて、そのときもいろいろな発言があった。 川勝さんをいつの時代に担当しても、「こんな発言があった頃」と発言で当時を振り返るぐらいに、川勝さんはあちこち、いろいろな場面でいろいろな発言をしている。 僕のときは「ヤクザゴロツキ発言」があった。県議会会派の予算要望のときに、自民党会派を念頭に「ヤクザの集団、ゴロツキがいる」といった話をした。その取材の場にはうち(静岡新聞)しかいなかった。川勝さんの肝いりの施策に対しても「これに反対する人は議員の資格がない」とも発言したのを記事に書いたら、そのときも大騒ぎになった。 ただ、うちしかその場にいなかったので、記者会見でその発言についてただしたら、「言った覚えがない」「そこだけ取り上げて、全体の脈絡と違う」と言い始めたので、会見の場で言い合いになった。「当時の(録音していた)音声を、もう1回流しますけど」と、そんなやり取りをしたのが今となっては懐かしい。 そうした経過もあった中で今回の発言の話に戻ると、川勝さんを弁護するわけではないが、この(訓示での)発言だけを取ると、確かに職業差別として捉えられかねない発言だった一方で、本人は絶対に差別の意識はなかったと確信をもって言える。なぜなら川勝さんは、農業などをはじめとする「実学」というものを尊重した発言をずっとしてきたし、農産物に関しても「農芸品」だと、リスペクトした言い方をしていた。 (訓示での発言は)問題発言であることは間違いないが、僕らも現場の記者らも川勝さんの本意ではなかったと受け止めた。もともと日常的にさまざまな物議を醸す発言をしているので、こちらも耐性ができて、一つ一つの発言にそれほど敏感に反応しなくなってしまう。現場は多分そうだったと思う。現にこのときの(訓示での)発言も、ごく一部の報道で。他のメディアは、次の日の新聞にもテレビにも出ていなかった。