独VWの中国戦略「シェアより利益」に転換の事情 中国勢との消耗戦避け、中長期で巻き返し図る
ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)グループが、販売台数の減少が続く中国事業の戦略転換を打ち出した。 【写真】中国事業を時間をかけて立て直す方針を示したVW中国法人のブランドステッターCEO 「中国市場では利益の確保を最優先する。利益を犠牲にしてシェアを取りにいくことはしない」。VW中国法人のラルフ・ブランドステッターCEO(最高経営責任者)は11月1日、そのような新方針を明らかにした。 VWグループの中国市場での販売台数は、2024年1月から9月までの累計で205万7000台にとどまり、前年同期比10.2%減少した。そのうち直近の7~9月期の減少率は同15%と、販売不振が深まっている。
■「EVで利益確保は困難」 ブランドステッターCEOによれば、中国市場ではEV(電気自動車)の熾烈な値引き競争が繰り広げられており、EV事業で利益を確保するのは非常に難しい。 とはいえ、VWを含む外資系自動車メーカーの“ドル箱”だったエンジン車は、需要が急速に縮小している。自動車販売の業界団体である全国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)のデータによれば、中国の乗用車市場における2024年1月から9月までのエンジン車の販売台数は844万台と、前年同期比16%減少した。
それとは対照的に、EVとPHV(プラグインハイブリッド車)を中心とする「新エネルギー車」の需要は急拡大が続く。乗聯会のデータによれば、1~9月の新エネルギー車の販売台数は前年同期比37.4%増の713万2000台に達した。 EVシフトへの対応が遅れた外資系メーカーは、エンジン車の大幅な販売減に直面すると同時に、新エネルギー車では中国メーカーの価格性能比の高さに太刀打ちできず、市場シェアを落とし続けている。
乗聯会のデータによれば、2024年9月には中国市場の乗用車販売台数に占める中国ブランドの比率が63.5%に達し、前年同月より10.1ポイント上昇した。 それに対し、(VW、メルセデス・ベンツ、BMWなどの)ドイツ系ブランドの比率は16.5%と同3.6ポイント低下。その他の外資系メーカーも、(トヨタ、ホンダ、日産などの)日系ブランドは12.6%と同4ポイント低下、(GM、フォードなどの)アメリカ系は5.7%と同1.7ポイント低下した。