ファーストフード店の時給3000円、米加州の最低賃金引き上げに賛否
米カリフォルニア州では今週、大手外食チェーン店で働くアルバイトの最低賃金が時給20ドル(約3000円)に引き上げられた。物価高を背景にアルバイト従業員らからは引き上げに歓迎の声が上がる一方、比較的小規模な事業経営者からは営業コストの上昇を懸念する声が上がっている。 カリフォルニア州のファーストフードチェーンで働く約50万人のアルバイトは、今週から最低でも時給20ドル(約3000円)を受け取るようになった。これは同州の定める最低賃金が従来の時給16ドル(約2400円)から引き上げられたためで、全米で60店舗以上展開する外食チェーン店に適用される。 労働者にとって高騰する物価対策となる一方で、経営者は営業コストの上昇を懸念している。経営者のブライアン・ホムさんは新たな最低賃金に対応するため、商品の価格をすでに5―10%値上げした。 経営者のブライアン・ホムさん 「時間の経過とともにいずれ利益が出なくなれば、店を閉めざるを得ないだろう」 ホムさんは妻とともに、7年前からサウスサンノゼでカフェを2店舗経営している。約30人の従業員のほとんどが、高校生や大学生の若者だという。 カリフォルニア州のニューサム知事は、州経済をより包括的なものにすることが、昨年9月に可決した。最低賃金引き上げの目的の1つだと説明する。だが66歳のホムさんはそうは考えていない。 「これは人々は賃上げを望むが、同時に事業を運営するためのコストが上がるため、うまくいかないというジレンマだ。おそらく大手企業は対応できるかもしれないが、ほとんどの小規模店舗は有色人種や移民、女性、そして私のような高齢者が経営している。私は高齢者で、家族を養うために経営している。経営がうまくいかなければ、家族が路頭に迷う」(ホムさん) だがファーストフード店で働くイングリッド・ビロリオさんは、賃上げについて明るい見通しを持っている。 ハンバーガー店従業員のイングリッド・ビロリオさん 「新たな最低賃金は、カリフォルニア州での重い生活費負担を多少軽減してくれると思う」 ビロリオさんはハンバーガー店で働いて4年になる。その間にビロリオさんは雇用主から就労時間を短縮された一方、仕事量を増やされたという。雇用主は賃上げに憤っていると、ビロリオさんは話す。 「1人の従業員が2―3人分の働きをしている。従業員として最も悲しいことは、雇用主はこの賃上げを、従業員にとってはわずかな賃上げを喜ぶどころか、給料を引き上げなければならないことに腹を立てていることだ」(ビロリオさん) 時給引き上げの効果を巡っては、専門家の間でも意見が分かれる。前出のホムさんが話していたように、時給引き上げが労働時間と雇用の削減につながるとの研究もある一方、労働者にとってより良い結果をもたらすとの報告もある。 またこの法律の規制対象外の企業が、どれだけ賃金引き上げの圧力を感じるかは、今のところ不透明だ。