1万8000円の“ノギス”、細部まで精度が高くて納得!
2000円のノギスと7000円のノギス。機能的にはほとんど変わらなさそうのに、どこにそんな違いがあるのでしょう? 人気メーカー、ミツトヨのデジタルノギス「ABSデジマチックキャリパ CD-15AX」を試してみました。 【もっと写真を見る】
長さや厚み、直径などを測るのに活躍してくれるのが、ノギス。測定面をスライドさせて対象を挟むだけで、1mmメモリの定規では測れない、0.1mmや0.01mm刻みで正確に測れるのが魅力です。 ただし、副尺(バーニヤ)メモリを読むのが意外と大変で、慣れていないと素早く数値を読み取れません。そのため、画面に大きく値が表示されるデジタルノギスを愛用している人が多いのではないでしょうか。 デジタルノギスは安いものでは1000円前後で買えますが、その多くは0.1mm刻み。定規を当てて測るよりは正確とはいえ、精密にサイズを測るには少々解像度が足りません。また、本体がカーボンファイバー(樹脂)製だということが多く、強く押したり捻ったりすると歪みますので、測り方によっては結構誤差があります。 人気のあるミツトヨのデジタルノギス もっと正確に測りたいというなら、0.01mm刻みのステンレス製デジタルノギスがいいでしょう。こちらは多少力を入れたところで歪みませんから、測定時の誤差も小さくなります。それでいて2000~3000円くらいから買えますから、意外と手頃です。 どうせ買うなら良いものをと思って有名メーカの製品をチェックしてみると、価格は一気に上がって7000円以上。機能的にはほとんど変わらないのに、どこにそんな違いがあるのか気になりますよね。 ということで、中でもとくに人気のあるメーカー、ミツトヨの「ABSデジマチックキャリパ CD-15AX」(実売1万8000円前後)を借りて試してみました。 原点セットや比較測定ができる! ノギスで測れるのは、外側測定、内側測定、段差測定、深さ測定の大きく4つ。デジタルノギスでもこれは変わらず、使い方も同じです。すべて測定面が異なりますので、測りたい部分に合わせて使い分けましょう。 ノギスの正しい使い方は、詳しい解説ページをミツトヨが公開していますので、ぜひご一読を。とくに間違えやすいのは、外側用のジョウ。先端の薄いところではなく、それより内側の部分が測定面です。 スライダーは、半円に飛び出た部分に指をかけて動かします。その横にある円形のサムローラーは微調整に向いているので、細かく動かしたいときはこちらを使う方が便利です。 おもしろいのが、絶対原点をもつABS(絶対)スケール内蔵モデルだということ。一度原点をセットしておけば、電源を入れるごとに再設定する必要がありません。電源オフのまま測ってしまっても、あとから電源オンにすれば、正しい数値が表示されるわけです。 原点セットのしかたは、スライダーを閉じて「ORIGIN」ボタンを1秒以上長押しするだけ。これで、開始位置の数値が0.00にリセットされます。たまにはスライダーを閉じた状態が0.00になっているか確認したほうがいいですが、毎回やる必要はありません。 ちなみにこのボタンは、出っ張りが少なく押しづらくなっているので、間違えて押されてしまうことはないので安心です。 また、原点セットとは別に、比較測定に便利なゼロ補正も可能。これは右下の「ZERO/ABS」ボタンを短く1回押すだけ。これで表示は0.00となります。 同サイズとなるはずの複数のモノを比較したい時、1つ目を測ってゼロ補正しておくと、2つ目以降がどのくらいの誤差があるのかを確認するのが簡単になります。 例えばA - B - Cの3つのポイントがあり、B - C間が測りにくい場合を考えてみましょう。この場合、まずA - Bを測ってゼロ補正し、A - Cを測れば、B - Cの長さが表示されます。こういった、測り方に活用するのもアリです。 上の例は段差測定でも測れますが、形状によっては段差測定できない場合も。そんな時はゼロ補正で測る方法が使えます。 ちなみに、ゼロ補正を解除したい場合は、ZERO/ABSボタンを3秒ほど長押しです。一回電源をオフにしても解除されるので、電源を入れ直してもOK。 個人的にオススメしたいのは、オプションのUSBケーブルとなる「USBインプットツールダイレクト USB-ITN-C」。DATAボタンが付いていて、押すと接続しているPCへと数値入力ができるんです。 普通にノギスとして使うだけなら必要ありませんが、実験や品質管理などで、次々数値を測って入力するというのであれば、あると便利です。 廉価品との違いは、仕上げや精度 廉価なデジタルノギスは絶対原点がなかったり、PCと接続できるオプションがなかったりしますが、基本的な"ノギスとしての機能"は大きく変わりません。それなら高価なノギスを買わなくてもいいんじゃないかと、考えてしまいますよね。 ところが、しばらくミツトヨのCD-15AXを触っていて気付いたことがあります。そう、作りの精度があまりに違うのです。 まず感じたのは、スライダーの動きが滑らかだということ。廉価なものだと動き出しが少し渋く、0.01mmだけ動かしたいという気持ちで慎重にサムローラーを回しても、ガクッと0.05mmくらい一気に動いてしまいます。これに対しCD-15AXは、本当に0.01mmだけスルッと移動できます。 どこに差があるのかと側面を見たら、磨き上げが段違い。廉価品は爪で触るとザラザラしているのが感じられますが、CD-15AXは滑らかで、ほぼ引っかかりがありません。 また、廉価品では外側用ジョウに段差があったり、スライダーを動かして閉じたときに内側用ジョウに隙間ができてしまう、といったように、精度面で問題があったりします。これに対しCD-15AXは、驚くほどピッタリ。誤差が少なく、精度高く測りたいのであれば、高価な製品を選ぶほうがいいですね。 使えば使うほど、精度の違いがわかってくる さらに廉価品を使って気になっていたのが、角が尖ったままになっているモノが多いこと。バリがあるわけではないですが、削ったままでほとんど角が丸められていないため、手が触れると結構痛いのです。強く握ったり、引っ掛けたりすると怪我をしてしまうくらいには尖っています。もちろん、何もかも丸めてしまえば精度が落ちてしまいます。しかし、測定に関係のない部分、ジョウの外側とか本体の側面とかまで、ツンツンに角が尖っている必要はありません。 こういった部分の仕上げまで気を配っているのが、CD-15AXの良いところだなと感じました。ここまで丁寧に作っていれば、なるほど、高価になるのも納得です。 「ただ測れればいい」というなら廉価品でもいいですが、道具として長く使いたいと考えているなら、CD-15AXの方が明らかに満足できる良製品。とくに、今まで廉価品を使って「こんなもんかな」と思っていた人にこそ、使って欲しいですね。 ●お気に入りポイント● ・スライダーが滑らかに動く ・オプションでUSB接続ケーブルがある ・精度が高く細部まで仕上げが丁寧 この記事を書いた人──宮里圭介 PC系全般を扱うフリーランスライター。リムーバブルメディアの収集に凝っている。工作が好きだが、最近あまり時間が取れないのが悩み。 文● 宮里圭介 編集●こーのス