TSMC株、約1年半で110%余り急伸-強気派からも警戒の声
(ブルームバーグ): 半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の株価急伸を受け、同社の最も忠実な支持者でさえ、同社を巡るリスクを無視することが難しくなっている。
人工知能(AI)を巡る世界的な投資家の熱狂の中、TSMC株は主要顧客であるエヌビディアの株価上昇に追随し、2022年10月の安値から110%余り上昇している。昨年のTSMCの全売上高にAI関連が占める割合は6%にすぎなかったが、市場は需要の爆発的増加を見込み、この数字が大きく上昇する可能性を織り込んでいる。
TSMC株の相対力指数(RSI)はここ2カ月間の大半は買われ過ぎの領域で推移しており、上昇が行き過ぎであることを示唆している。
モーニングスターのアナリスト、フェリックス・リー氏は、市場関係者の中で高めの目標株価を設定しているが、AI関連の成長がいつまで高水準を維持できるかについては、若干懸念していることを認めている。同氏の目標株価950台湾ドルは、20%超の上昇余地を示唆する。
貿易を巡る米中の緊張や今年の米大統領選の影響の可能性など、地政学的懸念によって見通しが不透明になっている。モーニングスターのリー氏は、TSMCの好調な受注が主にAI製品の最終需要によるものなのか、それとも政策の不確実性をヘッジしたい米国の顧客による在庫確保の動きによるものなのかは不明だと指摘した。
もう一つのリスクは、TSMCの売上高の20%余りを占める米アップルが、どれだけ迅速にスマートフォン業界の低迷に対抗し、自社の機器にAI機能を追加できるかということだと、みずほセキュリティーズ・アジアのアナリスト、ケビン・ワン氏が指摘した。
ただ、こうした懸念にもかかわらず、モーニングスターとみずほは共にTSMC株に引き続き楽観的だ。同社株の投資判断は35社が「買い」、1社が「ホールド」、「売り」はゼロとなっている。
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原題:TSMC’s 110% Rally Draws Caution, Even From the Bulls: Tech Watch(抜粋)
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Jeanny Yu