タクシー不足解消に向けて「新人タクシー運転手増加」の功罪 利用客は「同じ料金なのにストレスが貯まる」と困惑、地理試験廃止で質の低下を懸念する声も
ここ数年、新人タクシー運転手が増加している。公益財団法人東京タクシーセンターが公開している運転者証交付数の推移をみると、2023年3月では4万8515人の交付だったが、以降は増加傾向で、2024年9月は5万3076人に交付されている。
増加の背景として挙げられるのが、“資格を取得しやすくなった”ことだ。2022年5月から、旅客運送に必要な第二種免許の受験資格はそれまでの3年以上の運転経験かつ21歳以上から、1年以上の運転経験かつ19歳以上と大幅に緩和された。さらに、特定地域で運転手となるために必須だった“地理試験”が2024年2月に廃止されているのだ。 昨今のインバウンドの激増などによるタクシー不足が解消に向かうことは利用者サイドからも歓迎されるべきことだろう。ただ一方で、新人タクシー運転手に困惑する声も聞こえてくる──。
2024年問題でトラックドライバーから転職
都心を走るIさん(50代・男性)は、3カ月前にトラックドライバーから転職した。2024年問題の残業規制で、トラックドライバーとしての収入が減ったことがその理由だ。 「タクシーのほうが、頑張った分だけ稼げる可能性があると考えての転職です。すでに都心を走っていますが、道が全然わからないのでお客さんから怒られっぱなしです。前の仕事で使っていたのは高速道路や幹線道路ばかり。下道は難しいです」 道もさることながら、何より人を乗せる難しさを痛感しているというIさん。 「先日は、指示通りに走っていたはずなのに、『道が違う』と言われてしまいました。挙げ句、『800円しか払えない』と譲らないんです。運賃メーターを変えることはできないので自腹を切りました。出稼ぎや副業を含めてタクシー運転手になる方も多いと聞きますが、タクシーにはタクシーの難しさがあることを3カ月で痛感しています」(Iさん)
最初から道を知らないと開き直られても…
新人のタクシー運転手に何度か遭遇したことのある男性会社員・Rさんは、「『道を知らない』と開き直られても困る」と苦笑いだ。 「住所を伝えてナビに入れてもらうのですが、『指定の道はありますか』、『細かい道は知らないので教えてください』など、とにかく道をこちらに聞いてくる。指定通りに行かないと怒るお客さんもいるだろうから、道の指定を確認するのはマニュアルなんだろうなとは思うのですが、『お任せで』と言ってるのに、『知らないので……』と言う。最初から道を知らないと開き直るのはどうなんでしょうか。新人なら乗車料金が安い設定とかならわかりますが、同じ料金を払うなら、道を知っていて、こちらにストレスを与えない運転手を選びたいです」 つい最近、「新人運転手に道を間違えられた」というのは、女性会社員のOさんだ。 「目的地を伝えると、何度も『詳しい道を知らないので』と言いながら運転するんです。不思議だったので『○○までは大きな道路しか基本使いませんよ』と言うと、『新人なんです』とカミングアウトされました。 別に新人さんでもなんでも、早く目的地に着いてくれればよいので、それは特に気にしなかったのですが、目的地に近づいた頃合いで、運転手さんが何度もナビを確認していたので、なにげなく『行き先は線路の向こうですよ』と言うと、運転手さんはナビを無視して、とにかく駅の反対側に向かって直進したのです。 でもそうすると、道順的には私の目的地には遠回りになってしまう。ナビ通りいけばよかったのに、まるで私が悪いみたいな嫌な雰囲気になったので、結局駅前で降りて歩きました。早く着きたいからタクシーに乗っているのに、お金がかかったうえに結局多少歩く羽目になって、その日は一日気分が悪かったです」