“帝王”・本山哲監督からの、SFルーキーへの金言。木村偉織「『実力以上の結果は出ない』という言葉で、気持ちを整えてレースに臨める」
今季、San-Ei Gen with B-Maxからスーパーフォーミュラに参戦している木村偉織。昨年のスーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)で王者となりステップアップしてきた木村にとってはルーキーシーズンとなるが、監督である本山哲からの言葉には助けられているようだ。 【リザルト】ルーキー木村が好タイムマーク。富士公式テスト2日目午後の結果 昨年の2台体制から今季は1台体制に戻り、心機一転シーズンを戦っているB-Max。車両のカラーリングもブルーに変わり、ドライバーもルーキーの木村を起用した。本山監督は「チームとしても個人的にも『1年目のドライバーかあ』という思いの中で始まったんですけど(笑)、偉織も一生懸命乗ってくれて、走る機会ごとに学んでいて、そういった意味では思った通りに進んでいると思います」と評価。チームの雰囲気も非常に良いという。 木村は開幕2戦こそノーポイントに終わったが、第3戦SUGOでは途中終了でハーフポイントになったものの、予選順位の良さも助けとなり9位入賞。先日の富士テストでも好タイムをマークしており、次戦以降注目の存在となっている。 本山監督と言えば、現役時代はTeam LeMans、TEAM IMPULで計4度のフォーミュラ・ニッポン王者に輝くなど、国内のトップフォーミュラで輝かしい実績を残してきた。そんな自身の経験を木村にどのようにフィードバックしているのか尋ねると、本山監督はこう語った。 「レースを勝つためにどうすべきか、どういうクルマに持っていけば良いかという感覚は、個人として分かっています。僕はそれを数字にできるわけではないので、エンジニアと『こういうイメージのクルマにしたいよね』という話をしたり、偉織に対しては『こういうクルマはこういう走らせ方をした方がいい』という話をしています」 「メンタル的に関しては、意外と安定していますね。周りからは『偉織はちょっとダメなやつだよ』と聞いたこともありましたが……(笑)、思ったよりもテストからしっかり走ってくれているし、俺の見える範囲では真面目にやってる(笑)」 「彼と関わるのは今年からですが、コミュニケーションを取りながらやっていく中で、進歩してきていると思います。ただ、偉織本人も言うようにまだまだで、トップに行くためにはもっと速くならないといけませんが、チームと共にステップを踏んで進めていると思います」 こういった本山監督の言葉に補足する形で木村は、本山監督からのアドバイスで精神的に助けられている事例について語った。 木村は、FIA F4、SFライツで好成績を上げてここまでステップアップしてきたが、これまで気合いが入り過ぎるが故にミスを犯すケースも散見され、それが“速さはあるもののムラがある”という印象をつけていた。これは周囲も本人も認めていることだ。 しかしながら、今は本山監督からの声がけもあり、以前よりも落ち着いてレースに臨むことができているという。 「よくレース前に『なるようにしかならないから。自分の実力以上の結果は出ないから』と言って下さりますが、その言葉が自分の中で支えになっているというか、よりレースに集中できるものになっています」 「今までは、自分でなんとかしなきゃという思いが強かったです。もちろんドライバーなので勝ちたいですし、頑張らないといけないのですが、確かに実力以上の結果って出ないですよね。過去には実力以上のものを期待しすぎて、とっ散らかって失敗しちゃうことがあったので、本山さんにレース前や予選前にかけていただく言葉は、気持ちをリセットしてレースに臨む良いきっかけになっています」
戎井健一郎
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