横浜流星×藤井道人監督、映画『正体』の撮影現場で目撃した2人の“本気”
11月29日から公開中の藤井道人監督による映画『正体』。今年2月、都内のスタジオで行われていた同作の撮影現場を見学することができた。現場には、5つの顔を持つ指名手配犯・鏑木を演じた横浜流星、逃亡中に鏑木が出会う沙耶香役の吉岡里帆、和也役の森本慎太郎、舞役の山田杏奈、そして鏑木を追う刑事・又貫役の山田孝之らがいて、警察署の取調室や拘置所の面会室のセットを使った撮影が行われていた。 【動画】映画『正体』×ヨルシカ「太陽」Special MV 染井為人氏の同名小説を映画化した本作は、日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木が脱走するところから始まる。日本各地を転々とする鏑木と出会った、沙耶香、和也、舞は、のちに警察の取り調べで鏑木について語るが、それぞれの目に映った鏑木の印象は異なるものであった。行く先々で名前を変え、顔を変え、逃走を続ける鏑木は、罪から逃れたいだけの凶悪犯か、それとも…?鏑木と出会った人々による多視点サスペンスが展開する。 横浜は劇中で、和也とともに工場で働き、ぼさぼさの髪とヒゲで顔を隠す日雇い労働者「ベンゾー」、フリーライターとして活動し沙耶香と出会う「那須」、まぶたを一重に変えて水産加工工場に勤務する「久間」、目元の印象を隠すためメガネをかけ、舞が働く介護施設に勤める介護職員「桜井」まで、“5つの顔”を演じ分けた。 公開された拘置所のシーンでは、常にスウェットの上下を着て、ヘアメイクも変わらないが、かわるがわる面会にやってくる沙耶香、和也、舞、又貫に対して、それぞれ違った表情を見せた鏑木役の横浜。本作にかける彼のモチベーションの高さ、すごみが感じられた。 撮影の合間に行った藤井監督への取材で、横浜の芝居が「すごいですね」と話題になると、「でしょ」「うん、知ってる」と得意げ。「『正体』は主人公がさまざまに姿・人格を変えながら、いろんな人に会っていくという話なので、“横浜流星七変化”が見られるという点で、とても魅力的な作品です。しかもその一つ一つの精度というか、その人になりきる力が圧倒的にすごい。本当に楽しく撮影をさせてもらっています」と笑みがこぼれた。 343日間の逃亡劇を描く本作の撮影は、昨年の夏と今年の冬に実施された。藤井監督は、映画『余命10年』でも約1年をかけて撮影を行い、四季の移ろいを通して10年という歳月を表現し、映画も大ヒット。自身の代表作の一つになった。『正体』でも藤井監督たっての希望で、時期を分けて撮影された。 「俳優たちをそれだけ長い期間拘束するのは、非常にハードルが高いことです。しかし、それでもやりたい、という思いを大切にしていきたい。その時期にしかできない芝居というのは確かにあると思うんです。今回の作品は、時間の経過によって、髪型が変わったり、体形が変わったりといった変化が生まれるのも重要な要素だと思ったので、最初の段階から撮影時期を分けたいと話していました。それが実現して、画面にしっかりと表現されているのを見て、無駄ではなかったと実感しています」