一緒の時間が「愛おしい」 ジャガーFタイプ 小さくはないロードノイズ 長期テスト(3)
好ましいエグゾーストノート 視界は今ひとつ
このロードノイズに関する課題は、バッテリーEVの時代には過去のものになる可能性がある。シャシーのフロア部分に強固な駆動用バッテリーを抱えるため、基本的に防音性や剛性は極めて高い。ある程度の重さがあるから、制振性でも有利になる。 聴覚体験でいえば、エグゾーストノートは大きな魅力の1つ。Fタイプ R75には可変システムが備わり、スイッチ1つで静かにもうるさくもできる。1番騒がしいモードでも、本当にやかましいと感じるのは、公道では許されない水準まで攻め立てた瞬間のみだが。 この、存分に本領を発揮させられなかったことも、残念なことの1つ。最高出力575psのV8エンジンを積み、優秀な前後の重量配分を持ち、シャシーは高度な安定性を有する。出色の走りを期待させるパッケージングなのだが、サーキットを走る機会はなさそうだ。 それでも、ほぼフルボリュームに近い領域で、サウンドを鑑賞することはできた。幸運なオーナーの方は、ぜひ許された環境で、Fタイプの本領を発揮させてみて欲しい。 ロードノイズ以上に、惜しいと考えている弱点が、運転席からの視界の悪さ。シートポジションを、1番低い状態にした場合に限るけれど。そうしなければ、概ね見通しは良い。 11万1000ポンド(約2098万円)の、ジャガー最後の内燃エンジン・スポーツカー、Fタイプ。残された時間を、しっかり堪能しておこうと思う。
テストデータ
■気に入っているトコロ 味わい深いレイアウト:バッテリーEVの時代になったら、ロングノーズ・ショートデッキというプロポーションは非常にレアになるだろう。旋回時の挙動を正確に感じ取ることも、難しくなる。 ■気に入らないトコロ 小さくないロードノイズ:V8エンジンの排気音で覆い隠すことはできるが、音量は想像以上といえる。将来の電動ジャガーは静かになるはず。 ■テスト車について モデル名:ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様) 新車価格:10万3075ポンド(約1948万円) テスト車の価格:11万1000ポンド(約2098万円) ■テストの記録 燃費:9.8km/L 故障:なし 出費:なし
スティーブ・クロプリー(執筆) 中嶋健治(翻訳)