開発か景観か「宝石のような街」盛岡のジレンマ マンション広告の「岩手山」取り違えで市民が激怒したことも
盛岡市の景観計画は、中津川両岸を「景観形成重点地域 河川景観保全地域」と位置付けており、「河川の対岸から見たときに、建築物等が河川の景観に対し圧迫感を与えないよう、対岸から見たときの仰角による建築物等の高さ及び河川に面する側の建築物の配置、形態、意匠並びに色彩等について配慮すること」と記載している。 しかし、この高さ制限の範囲は川沿いの道路の端から30m以内にある建物となっており、このマンションは対象外。そもそも計画に拘束力はない。
内舘市長は記者会見で「地域固有の景観形成の観点から指導等ができる仕組み」に言及し、景観保全のための規制を検討していることを明らかにしている。 ■これまでの盛岡マンション問題と景観 景観問題とともに、人口減少が進む盛岡でのマンション需要を不安視する声もある。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の推計では、盛岡市の人口は2050年には2020年比で22%減少すると予想されている。 一方で、盛岡のマンションは1973年以降、多い年で10棟前後建設され、2021年3月時点で3階建て以上のマンションは181棟(1万1200戸)ある(盛岡市マンション管理適正化推進計画)。
東北の主要都市の中では政令指定都市である仙台市に次ぐ多さで、盛岡よりも人口の多い郡山市(福島県)などと比べて盛岡のマンション棟数は多い。 また、近年の盛岡のマンション建設は、いわゆる「大手7社」には含まれない中堅デベロッパーによるものが多いのが特徴で、地方都市でのマンション開発に詳しい不動産鑑定士は「大手に比べて資金力に劣る中堅以下のデベロッパーは、地価が高騰する都市部での用地取得が難しい時代になり、今後もコストとのバランスを見ながら盛岡のような地方でのマンション建設を進めるのではないか」と予想する。
インバウンドが回復する中、主要観光都市だけでなく地方への外国人客も増加傾向にある。宿場町や町家、武家屋敷などの街並みも脚光を浴び、長い歴史のある祭りや修験道、酒造りなど日本文化を体験できるコンテンツへのニーズも高まっている。 その一方で、土地の歴史や文化を伝える地方の街並みは、資本力の大きい都市部のデベロッパーにより開発が進み、今も各地から姿を消しつつある点にも目を向けていきたい。 【写真】自然と歴史、文化が息づく盛岡市内。各所でマンション建設が進んでいる様子など(12枚)
手塚 さや香 :岩手在住ライター