開発か景観か「宝石のような街」盛岡のジレンマ マンション広告の「岩手山」取り違えで市民が激怒したことも
■「岩手山」取り違えで市民が激怒 マンション建設ラッシュを受けて、紺屋町内で染色業を営む経営者や喫茶店オーナーら有志は2024年1月に勉強会を開催。 その後に「紺屋町まちづくりの会」を発足して、街並みを守るための景観のルールの設定や、デベロッパーと地域住民の話し合いの場の設定などを求めて市に要望書を提出するなど、街並みを保全するために働きかけを続けてきた。 すでに工事が始まり建設やむなしという空気が漂う中、このマンション問題が再燃したきっかけは6月、デベロッパーが盛岡市内で配布した折り込みチラシだった。
「中津川&岩手山ビューと圧倒的な開放感」をうたったこの物件のチラシの全面に載った眺望CGパースの画像が、うたい文句の岩手山ではなく、青森県の「岩木山」になっていたのだ。 岩手の象徴として愛されている山の取り違えに、盛岡市民は怒り心頭。X上にはこのチラシの写真とともに「地域へのリスペクトがなさすぎる」「盛岡を舐め腐っている」などデベロッパーを辛辣に非難する投稿が並び、新聞やテレビも相次いで報道する騒動に発展。
盛岡市の内舘茂市長も「このたびの写真の取り違えは、誠に遺憾」として「岩手山は私たち盛岡市民にとってシンボル的な存在であり、先輩方のたゆまぬ努力によりその眺望が確保されてきました。事業者には、一層の慎重さをもって、市民感情に寄り添う配慮をお願いいたしました」とデベロッパーに抗議したことを説明した。 デベロッパーは盛岡市長のもとを訪問して、このチラシについて謝罪する事態に。ホームページにも【お詫び】と題して、謝罪と経緯を説明する文章を掲載した。
■計画再考を促す機運は高まったが…… この岩手山取り違え問題によって、計画に再考を促す機運が高まり、元盛岡市役所職員や建築士らでつくる住民団体「盛岡の景観と歴史的建造物を考える市民の会」も発足し、市民合意が得られるまで建設を中断することや市の景観計画の見直しなどを求めて、市とデベロッパーに要望書を提出。 同会によると デベロッパーからは▼盛岡市中高層建築物等の建築等に係る住環境の保全に関する条例に基づき、近隣住民に対し計5回の説明会を実施したこと▼説明会で高さや外観・外構のデザインなどについての意見を踏まえて「可能な限り」変更や調整を行ったことーーなどを説明する回答書が送付されたという。