開発か景観か「宝石のような街」盛岡のジレンマ マンション広告の「岩手山」取り違えで市民が激怒したことも
この中津川の南側は古くから河南(かなん)地区と呼ばれ、「紺屋(こんや)町」「肴(さかな)町」といった城下町の歴史を伝える町名が今も残る。 2003年と2006年に市の郊外に大型ショッピングモールが開業したことによる市街地の空洞化やこの地区にあった商業施設の撤退などで、一時期は人通りが減っていたが、その後にマンションや新たな商業施設が建設されたことから、再びにぎわい始めたエリアでもある。 ■観光名所の目の前も。相次ぐマンション建設
2000年代にもマンション建設ラッシュがあった河南地区だが、2023年のNYT報道と時を同じくして再び10階建て以上の高層マンションの建設が相次ぎ、市民をざわつかせている。 物議を醸しているのは、建設中のマンションの立地。国重要文化財で盛岡の観光ポスターなどでおなじみの岩手銀行赤レンガ館(1911年築)の目の前では、コインパーキング跡地に15階建てマンションが建設され、2025年に分譲が開始される。
“「岩手山」「岩手城跡公園」を一望する圧倒的眺望。”が売りとあって、はす向かいの赤レンガ館や周囲のオフィスビルに比べ、その高さが目立つ。 このマンションの並びでもマンション建設の計画が進んでおり、共同通信の報道によるとマンションと商業施設を含めた区画の再開発の財源の46.4%は補助金だ。 この地区のマンション建設をめぐってはSNS上で“炎上”した物件もある。それが、赤レンガ館から徒歩5分の中津川べりで建設が進む14階建てマンションだ。
もともとこの土地には、岩手県内で最も古い酒蔵である菊の司が大正時代から酒を仕込んできた蔵があり、城下町盛岡の風情を伝える景色として親しまれてきた。しかし、同社の経営悪化により、2021年にパチンコ・スロット事業などを展開する盛岡市内の企業に事業譲渡された。 市民から酒蔵の行く末を懸念する声が上がる中、譲渡先企業は耐震性の問題を理由に製造工場の移転を発表。しばらくして、都内に本社のある中堅マンションデベロッパーによる建設計画が明らかになった。