開発か景観か「宝石のような街」盛岡のジレンマ マンション広告の「岩手山」取り違えで市民が激怒したことも
2023年にニューヨークタイムズ(NYT)が発表した「2023年に行くべき52カ所」に選ばれた岩手県盛岡市。大きく報道されたことで国内外からの旅行客でにぎわう一方で、NYTに推薦したアメリカ人作家が「歩いて回れる宝石のような街」と評した市内中心部ではマンション建設が進み、昔ながらのたたずまいが魅力の盛岡の街並みは変わりつつある。 【写真】岩手山の写真を取り違えたまま配布され、物議をかもしたマンションのチラシ ■「宝石のような街」盛岡はコロナ前以上の観光客 NYTの「行くべき52カ所」に盛岡を推薦した日本在住歴20年の作家で写真家のクレイグ・モドさん。
彼は盛岡について「混雑とは無縁で、歩いて回れる宝石のような街」「大正時代に建てられた西洋と東洋の建築美が融合した建物、近代的なホテル、いくつかの古い旅館、曲がりくねった川が街中にあふれている」と同紙に寄せた。 【写真】自然と歴史、文化が息づく盛岡市内。各所でマンション建設が進んでいる様子など(12枚) このNYT報道を機に、日本のテレビや新聞、webメディアがこぞって盛岡を紹介。その効果もあってか2023年の盛岡市の宿泊観光客数は107万人泊で、コロナ禍前の2019年を上回る数字に。宿泊客数と日帰り客数を合わせた観光入込客数も前年比16.3%増の430万人と好調だ。
外国人宿泊観光客も6万5000人とコロナ禍前の水準に戻り、市観光課は「ニューヨーク・タイムズ紙効果により、欧米諸国からの旅行客が増加傾向」とみている。 ■歴史ある城下町 古い街並みと町名が残る地区 南部藩の城下町であり、明治・大正のころは商業や文化の拠点として栄えた盛岡。 石垣が残る盛岡城跡公園のすぐ横には、秋になると鮭が遡上する中津川が流れ、そのほとりのエリアに、南部鉄器や染物の工房、リノベーションされた歴史的建造物、老舗の喫茶店などが点在。江戸から近現代まで、さまざまな時代の暮らしぶりが感じられることから、外国人観光客にも人気が高い。