ルポライター・村田らむが語る映画『クラブゼロ』新興宗教のリアル 一度ハマると“やめ時”が難しいワケとは?
体を張ったルポに定評があり、新興宗教にも潜入取材をしてきたルポライターの村田らむ。第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された、ミア・ワシコウスカ主演のスリラー映画『クラブゼロ』を鑑賞したところ、「まるでドキュメンタリーを見ているようでした」と感心しきり。ワシコウスカ演じる栄養学の教師が説く“最新の健康法”に、無垢な生徒たちが夢中になっていく姿を描く本作。劇中の指導者像や謎の教えにハマっていく子どもたちの様子に、村田は実際のカルトにも通じるリアリティをたっぷりと感じたという。 【写真】『クラブゼロ』カルト化する食事法・・・様子のおかしい生徒たち 栄養学の教師ノヴァク(ワシコウスカ)が、名門校に赴任してきたことから物語はスタート。ノヴァクは“意識的な食事”と名づけた「少食は健康的であり、社会の束縛から自分を解放することができる」という食事法を生徒たちに説く。親たちが気付き始めた頃には時すでに遅く、生徒たちはその教えにのめり込み、「クラブゼロ」と呼ばれる謎のクラブに参加してしまう――。ジェシカ・ハウスナー監督とワシコウスカは、ノヴァクの動機や事情、意図について徹底的に話し合いを重ねただけでなく、カルト教団の元信者たちに取材をしながら指導者像を作り上げた。 ■ハマりやすい教義とは? 名門校に通っている生徒たちは、健康的な心身を保つため、奨学金を得るためなど、それぞれの目的を持ってノヴァクによる栄養学の授業を選択。ノヴァクは“意識的な食事”は、彼らのすべての願いを実現し、地球まで救うような食事法だと説明する。 「自分で実践しているだけでなく、その思想を広げていこうとした時点で新興宗教的」と切り出した村田は、「ノヴァクは栄養学として、教えを広め始めます。入り口が科学的だからこそヤバい」とコメント。「神の教えを説いたりするような、あからさまに宗教というものではなく、入り口が科学的だとカルトに引っ張りやすいんですね。最初は研究会や勉強会だと思って入ったら、カルト集団だったということはよくあること」だという。 劇中でも当初は、熱心に栄養学を教える先生としてノヴァクは生徒たちの親からも歓迎され、授業を進めていく。生徒たちは極端な食事制限を始めていくのだが、彼らがいつの間にか自然に、ノヴァクの教えに導かれていく様子がなんとも恐ろしい。 村田によると「食事や睡眠制限をさせる宗教団体も多い」のだとか。「何人かのグループで一緒に禁欲的なことをすると、仲間意識が芽生えてくるんですね。さらに周りの人たちと比べて、自分たちは一段上のことをやっている、自分たちはすばらしいことをしているという意識を植え付けることができる。これはカルトに限らず、宗教団体では多く行われていること」だと話し、それだけに「ノヴァクのもとで生徒たちが教えにのめり込み、絆が深まっていく様子はものすごくリアル」だとうなる。