【司法書士が解説】“共有名義人が行方不明”でも「共有不動産を丸ごと売却」するには?令和5年スタートの新制度も含めて紹介
共有不動産を売却したいが、共有者のうちの1人が行方不明(所在不明)で手続きが進められない…。こんなとき、どうすれば不動産全体を売却できるのでしょうか。佐伯知哉氏(司法書士法人さえき事務所所長)が、「共有者が行方不明になっている不動産」の売却方法を解説します。
「共有者が行方不明の不動産」を売却するには?
【YouTube】司法書士さえき事務所チャンネル 複数人の共有名義になっている不動産(土地や建物など)を、共有不動産といいます。共有不動産は基本的に、共有者全員で手続きをしないと、不動産全体を売却することができません。 では、共有者のうち誰かが行方不明になってしまった場合、どうすればその不動産を処分できるのでしょうか? 今回は「共有者が行方不明の不動産」を売却する方法について解説します。従来の方法と、2023年4月からスタートした方法を見ていきましょう。
従来の「2つの方法」
従来では、次の2つの方法がありました。 【従来の方法(1)】裁判所の判決による共有物分割 1つめは、裁判所の判決による共有物分割です。裁判所に「共有物分割の訴え」を提起し、裁判所から判決を受けることで、行方不明者の持分も含めて共有物を譲ってもらうなどの手続きを取る方法です。 【従来の方法(2)】不在者財産管理人を選任し、共有物分割か持分の譲渡を受ける もう1つは、行方不明の人に対して「不在者財産管理人」を選任し、その管理人と共有物分割をしたり、持分の譲渡を受けたりするなどの方法です。不在者財産管理人というのは、行方不明の人がいる場合にその人に代わって財産を管理する人で、裁判所が選任します。
ただし、「従来の方法」にはデメリットも
上記を行ってから売却に向けた手続きを進めていく…というのが従来の流れでしたが、ここにはデメリットもありました。 ●手続き上の負担大 「(1)裁判所の判決による共有物分割」という方法では、すべての共有者を当事者として訴訟提起をしなければならないなどの手続き上の負担が大きく、判決を受けるまでが結構大変です。 ●不在者財産管理人の選任が必須で、管理人への報酬等の費用負担が大きい 「(2)不在者財産管理人を選任し、共有物分割か持分の譲渡を受ける」という方法では、不在者財産管理人の選任が必須で、管理人への報酬等の費用負担が大きいというデメリットがあります。 多くの場合、不在者財産管理人に選任されるのは「弁護士」です。まず申し立ての段階で、予納金のような形で裁判所へ数十万円ほど渡すことになります(これは管理人の報酬等に充てられます)。もちろん弁護士も仕事ですのでタダというわけにはいきませんが、やはり結構な金額ですよね。