【司法書士が解説】“共有名義人が行方不明”でも「共有不動産を丸ごと売却」するには?令和5年スタートの新制度も含めて紹介
「(1)持分取得」と「(2)持分譲渡」、どちらを選ぶべき?
(2)については「売却ありき」の方法ですが、(1)は行方不明者の持分を取得するための請求ですので、必ずしも売却を目的とする必要はありません。「取得して終わり」というのもアリです。 もとより売却を検討しているのであれば、(2)の方法でよいでしょう。「権限を与えられてから2ヵ月以内に売却」という点だけご注意ください。時間としては割とタイトです。 ちなみに不動産が「遺産共有」の状態にある場合は、相続開始から10年以上経過しなければ、上記(1)(2)の制度は利用不可となっています。 遺産共有とは、不動産などの相続財産が、遺産分割協議が行われないまま法定相続人の間で共有になっている状態を言います。たとえば最初の共有者がAさん・Bさんの2名だったところ、Bさんが亡くなりました。Bさんの相続人は複数名いるものの、そのなかに行方不明の人がいる…といったときなどに起こります。 「“もともと共有状態にある不動産”を売却したいが、共有者が行方不明になっている」というケースであれば上記(1)(2)の手続きを取ることができますが、「共有者の誰かが亡くなっている場合」では、10年以上経過してからでないと使えないのでご注意ください。 以上、今回は「共有者が行方不明になっている不動産」を売却する方法を紹介しました。2023年4月からこの方法が取れるようになり、共有者が行方不明の不動産は、従来よりもラクに売却手続きを進められるようになりました。共有不動産を放置すると権利関係が複雑になってしまうため、早めの対処をおすすめします。 佐伯 知哉 司法書士法人さえき事務所 所長
佐伯 知哉