ローラやクリスタル ケイにも取材…ハーフモデル・エリーローズが考えた「違い」の受け入れ方
「違い」はどう受け入れたらいい?
「人種」をめぐる概念のひとつに、一人の人間は必ず特定の1つの人種に属しているものだという「モノ・レイシャリティ(単一人種観)」という思い込みがありますが、それは、日本以外でも、例えば移民国家や多民族国家と呼ばれるような国でも同様に見られます。「誰でも属している人種はそれぞれ一つだけ」という価値観が優勢な社会の中で、複数のルーツを持つ人に対する偏見や誤解が生まれてしまっています。 多様性を高めるだけでなく、その多様性を受け入れて、いかに個性を認め合う社会にできるか。マジョリティとマイノリティがしっかりと手を取り合っていける社会になったら、皆が幸せになれるのにな、と思っています。 ここからは、ハーフ当事者たちにインタビューした内容を掲載しますので、私たちの声を聞いてください。 ---------- Q.1「自分が他人と違うと感じたきっかけ」 Q.2「その“違い”の受け入れ方」 Q.3「あなたはハーフとして差別を受けたことがありますか? もし経験しているならエピソードを共有していただけますか?」 Q.4「他者との違いを感じたときに(外見だけでなく、価値観など様々な面を含めて)、どのように対処すべきだと思いますか?」 ---------- ---------- クリスタル・ケイ (歌手/アメリカ、在日韓国人) Q1「自分が他人と違うと感じたきっかけ」 私が最も周りとの違いを感じたのは、(父が勤務していた)在日米軍基地の外で日本人の子どもたちと一緒に遊んだときでした。彼らは私に「肌の色が濃い、黒人みたいだ」と言ったり、「なぜ髪の毛がクルクルしているのか、なぜそういう外見なのか」と聞いてきたりしました。実を言うと、子供の頃は私も韓国人と日本人の違いがよくわかっていませんでした。軍事基地では、私のようなハーフの子供は多かったものの、韓国人と黒人のハーフはいませんでした。ほとんどが日本人と白人または黒人のハーフだったけど、私たちは基本的にかなり似ていて、みんなアジア人のハーフでした。 Q2「その“違い”の受け入れ方」 自分のアイデンティティーを探す旅はまだ続いていると感じますが、旅行や海外での生活が私の考え方を変え、自分の「ユニークさ」をポジティブなものとして捉えられるようになったかな。アメリカでは、英語と日本語の両方で話し歌うこと、外国で長年活動していることを人々が常に称賛してくれて、自分を誇りに思えるように促してくれました。日本で生まれ育った私は、“同質性が高く、「出る杭は打たれる」社会”に慣れていて、目立つことが好きではありませんでした。しかし、少しアメリカに住んでみると、私の三つの文化(日本・韓国・アメリカ)の素晴らしさが“超能力”であることに気づかされました。 Q3 「あなたはハーフとして差別を受けたことがありますか? もし経験しているならエピソードを共有していただけますか?」 私は日本で少数派である、韓国人とアフリカ系アメリカ人のミックスのために、ネットでヘイトやいじめを受けたことがあります。人々は「彼女はなぜ日本にいるのか。アメリカで働くか、出ていくべきだ」と言ったり、韓国人と黒人を指す侮辱的な言い方をしたりもしました。「彼女はとても黒い、マサイ族か」と言われたこともあります。こうした話は枚挙にいとまがなく、フラストレーションがたまりますが、そういう書き込みをする人は自分自身の不幸を他人に投影しているだけ、彼らの中傷なんて誰も目にとめない、と考えるようにしています。 Q.4「自分が相手と違うと思ったときに(外見だけでなく価値観などいろいろ含めて)どういうふうに対応すればといいと思うか?」 もし相手と価値観が違ったら、そうなんだなと受け止めるしかないと思います。もし相手の価値観を不快に感じたら、相手を変えることは難しいけれど、自分の意見を相手に伝えて、話し合うことはできる。そうやって、相手の視野を広げるきっかけをつくることはできると思います。 ---------- ---------- ローラ (モデル/日本、バングラデッシュ、ロシア) Q. 1「自分が他人と違うと感じたきっかけ」 小さいとき2つの国を行き来していたから、日本に帰ってきた時に、言葉がみんなみたいにうまく話せなかった時と、肌も小麦肌で、みんなと違うなぁと思っていて、自分は何人なんだろうってよく思っていたよ。 Q. 2「その“違い”の受け入れ方」 言葉がうまく話せなかったとき、手や顔を使ってよくジェスチャーをしていたんだけど、それがうまく伝わるとすごく嬉しくて、うまく話せなくても気持ちが伝わればいいんだって受け入れるようになったよ。見た目は、アメリカにきてから、様々な人種の人々が住んでいる国を見て、英語を覚えて、お友達と話せるようになったら、自分が持っているありのままの肌色、黒髪がどんどん好きになってきたよ。私は何人になろうとかしなくていいんだ! ありのままでいいんだ! って思える気持ちが大きくなってきたよ! Q.4「他者との違いを感じたときに(外見だけでなく、価値観など様々な面を含めて)、どのように対処すべきだと思いますか?」 違うと思った時は、例えばわからない言葉があったりすると、素直に、わからないなぁ! 教えて欲しい! って伝えたり、見た目が違う時は、お互い個性的でいいね! って思ったりするよ。みんな違って、みんないい! ってね。自分が知らないことってたくさんあると思っているから、逆に相手の文化や価値観などを聞くとおもしろい! ---------- ---------- ジュード (イギリス、インド) Q. 1「自分が他人と違うと感じたきっかけ」 ロンドンの多文化社会の中で育った私は、人種的には他の人とそれほど違うと感じませんでした。移民が多く生活しているロンドンは、日本とは非常に異なると思います。そんな背景もあり、子供の頃から常に異なる文化に触れることをリスペクトし大切にしてきました。小学校ではイードの日(イスラムの祝祭日のひとつ。「祝宴」を意味する)はいつも面白かったな。だってムスリムの背景を持つ生徒が多かったから、ほとんどの人が学校に登校してなかったんだから。そんな休日と体験は多民族が暮らすイギリスならではの経験だと思うんです。 Q. 2「その“違い”の受け入れ方」 歳を重ねるにつれて、私は自分のハーフの二重性に気づき、自分のルーツの一つであるベンガルの伝統文化について調べたり意識するようになりました。ベンガル出身の父親は自分の親きょうだいとあまり親しくなかったから、私自身はベンガル・コミュニティと触れ合う機会があまりありませんでしたが、父はベンガルの食文化は大切にしていて、父が祖母から受け継いだ味は、私にとって最も父方の家族と結びつきを感じるものでした。 Q. 3 「あなたはハーフとして差別を受けたことがありますか? もし経験しているならエピソードを共有していただけますか?」 私たちは分断と困難に満ちた世界に住んでいるので、残念ながら、私も人種的偏見にさらされたことがあります。だけど、ハーフとして生まれたおかげで2つの豊かな文化を受け継ぎ、また体験できていることに感謝しています。 Q.4「他者との違いを感じたときに(外見だけでなく、価値観など様々な面を含めて)、どのように対処すべきだと思いますか?」 何人はこうだからと決めつけることは絶対にしてはいけないと思います。人はそれぞれの背景や文化があるからこそ違いがあるわけで、それがユニークな部分でもあり、面白い。考え方や捉え方が違うのは当たり前のこと。お互いの違いを受け入れることで理解し合えるし、そこにハーモニーが生まれるんだと思います。 ---------- ---------- 匿名希望(日本、バングラデシュ) Q. 1「自分が他人と違うと感じたきっかけ」 9歳の時に日本に住みはじめてから、見た目は大きく違うと感じていた。 Q. 2「その“違い”の受け入れ方」 はじめは「違う」ことにすごく悲しくなって否定したくて、同じになりたかった。でも私の場合は、幼い頃は「一緒」の人は無条件に仲間なんだろうなと思っていたのが、大人になるにつれて、例えば自分と同じ意見だったり、同じ性別だったとしても、対立したり理解し合えないこともあるなどを経験して、(人種、意見など)違う人も一緒の人も同じくらい大切なんだなと思えたことで、そこからは受け入れられるようになった。 Q.3 「あなたはハーフとして差別を受けたことがありますか? もし経験しているならエピソードを共有していただけますか?」 ハーフの友達3人と日本人の友達1人の4人でいた時に、飲み屋で酔っ払った人に「日本語うまいね」って絡まれてから、永遠と「なんで日本にいるのか」を問われ続けて、日本人なんですって説明しても終わらなくて、最終的に喧嘩になったことがあります。あちらが泥酔していたというのもありましたが、私たちが怒るまで試されてるようだったのがめちゃくちゃ屈辱的でした。失礼なことを言い続けられたら怒らないように我慢できないのは、外人だからでしょ? という圧がとても差別的でした。 Q.4「他者との違いを感じたときに(外見だけでなく、価値観など様々な面を含めて)、どのように対処すべきだと思いますか?」 例えば議論とかの場になった場合は、自分の立場を表明する前にその人の意見を聞いて、早めに意見が違うことをお互い共有した上で、こちらからそれでも私は好きですよという好意的なアピールをする。でも自分しか正しくないと思っているタイプの「違う」人もいるので、そういう人はなるべく迅速に嗅ぎつけた上で、私の場合は自分の意見を表明しないこともある(日本で生きていくうえで自然と生まれた処世術かもしれないです)。 ----------
エリー ローズ(モデル、DJ、コラムニスト)