阿部一二三「オリンピックで4連覇すると決めている」詩「悔しさは自分次第で大きな糧になる」(柔道)
柔道日本代表の阿部一二三と詩の兄妹が語る、パリ五輪の反省とロス五輪への決意。 【写真を見る】歓喜の一二三、茫然の詩。兄妹の絆を感じる名場面も
阿部詩「金メダルでリベンジしたい」
8月の終わり、阿部一二三と詩の兄妹は、東京・銀座のオメガブティック銀座本店に姿を現した。オメガの「パリ2024アンバサダー」を務めたふたりが、トークショーを行うためだ。 一二三は、選手村でも黒いベゼルのコンステレーションを装着していたと明かし、詩はフォーマルな服装のときにブルーのコンステレーションをつけると笑顔で語った。 トークショーを終えてインタビューの席についたふたりは、小声でなにかをささやきあっている。トークショーの感想か、あるいはスケジュールの確認か。いずれにせよ、仲のよさが伝わってくる。 まず阿部詩に聞きたかったのは、個人戦での敗戦から6日後の団体戦に出場、見事に勝利を収めたことについて。無念の敗戦に感情を抑えきれなかった詩は、あの短期間で、どのように気持ちを切り替えたのだろうか。 「負けた直後には、団体戦のことは考えられませんでした。でも優勝した選手も負けた選手も、団体戦に向けてひたむきに調整している姿を見たときに、チームのために戦って、ひとつでも勝たないと胸を張って日本に帰れないと思ったんです」 自身の試合の直前に、妹の敗戦をモニターで確認した兄の心情はどのようなものだったのか。そう問うと、一二三は毅然とした表情でこう答えた。 「自分も一瞬、落ち込んだけれど、でもそこで難しいとか言っていたら絶対に勝てません。一流じゃない。オリンピックで4 連覇すると決めているので、そこはやるしかなかったです」 パリで得たことがあるとすれば、それはなにかと尋ねると、詩は少し考えてから、ゆっくりと切り出した。 「周囲の方に支えていただいていることに気づき、改めて感謝の気持ちを持てたことは収穫です。東京からパリまで一度も負けずにきたので、ここで負けた悔しさは自分次第で大きな糧になると思っています。4年間、自分の長所を高めて、ロサンゼルスでは金メダルでリベンジしたいですね」 印象的なのは、4連覇やロスで金など、目標を明言することだ。日本人アスリートはメンタルが弱いという声も耳にする。けれども、「金を取る」と宣言する日本人は、海外の選手の目には、強靭なメンタルの持ち主に映るという。こう話を振ると、一二三は小さくうなずいてから、その理由を語った。 「僕の性格からいって、自分で発言することによって、成し遂げないといけないという覚悟が決まります。ここまで来たらプレッシャーは避けられないし、そもそも東京五輪の代表争いの重圧に比べれば、たいしたことはないと思えるんです」 詩はどうだろうか。 「私の場合は、自分にプレッシャーをかけようとか、そういうことではないですね。本当に自分が思っていることを発言しています。高校生の頃は怪物と呼ばれたいと言っていましたが、最近は少し考えが変わって、常に淡々と勝ち続けるのが格好いいかなと思い始めています」