「3分3回エキシビション」では肩透かし?!メイウェザー対那須川天心戦が紆余曲折した真相とは
今回の騒動の一番の被害者といえる那須川天心は、この日、両国で行われたキックボクシングの「RISE 129」で内藤大樹(22、ストライキングジムAres)を1回KOで倒してリング上で「メイウェザーを倒す」と宣言した。 中止騒動が起きた際には「エキシビションだと試合を受けない」とも語っていたが、榊原実行委員長は、「その発言は聞いているが、天心サイドともコミュニケーションは取れている。KOありのフルスロットルでの戦いは勝ち取れた。天心サイドのOKはもらった」という。 確かにエキシビションだが、天心が真剣勝負を挑みKOを狙いにいくことまでを制限されたわけではない。 そこに試合の面白みは残った。 「天心寄りのルールは勝ち取れなかった。メイウェザーからすれば、“(パンチは)当たらないでしょ”“(奇跡は)起きるわけないでしょ”だし、20歳のキッズを相手に真剣になって“ぶっ倒してやる”というわけでもなく舐められている。でもリング内では何が起きるかわからない。全力で倒しにいって本気のスイッチを押させるかどうか。奇跡を起こして欲しい」 榊原実行委員長は、この試合にシルヴェスター・スタローン主演の人気映画「ロッキー」の話を重ねた。絶対的な世界王者だったアポロ・クリードが、無名のロッキー・バルボアに世界挑戦のチャンスを与え、最初は見下していたが、ロッキーの大健闘で、試合は最後までもつれ、感動のフィナーレを迎えるという物語である。 「あの試合を作ったのはロッキー。フィクションの世界だが(ああいう展開に)期待をしたい」 だが、映画「ロッキー」の中の舞台設定はフルラウンドの世界タイトルマッチである。たった3ラウンドのエキシビションで50戦無敗を支えた超絶のディフェンス技術を持つメイウェザーを相手に体重差のある那須川が、KO勝ちの奇跡を起こすことは想像しにくい。それでも榊原実行委員長曰く「世界最高のギャランティのエキシビションマッチ」である。 「100億円マッチ」とはいかないが、推定「数億円から10億円」とも言われる破格のギャランティで、たった9分間のエキシビションを戦うのだからメイウェザーが何もせずにただパンチを避けるだけで帰国することも考えにくい。 メイウェザーが、本来のスタイルを崩し、サービス精神を出して何かを魅せることでもしてくれば、もしかしたら、そこに奇跡のカウンターチャンスが生まれるかもしれない。 プロの興行なのだから、パンチを一発でも当てて、観客を沸かせれば天心の勝ち。この戦いで天心が失うものは何もないだろう。うまくいけば、格闘家として世界的な評価を勝ち取ることも可能だ。 3分3ラウンドの「限りなくボクシングルールに近いエキシビション」は、完全な肩透かしだが、「見たいか」「見たくないか?」と、聞かれれば、“生メイウェザー”の日本リングの登場は、やはり「見てみたい」のである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)