コロナ禍で相次ぐ説明会の中止。就活の常識が覆る危機を「最速」で乗り切った組織のリーダーが得た“やらない選択”|株式会社ワンキャリア
当時ONE CAREERでは、2020年3月からという圧倒的なスピード感で「ONE CAREER 説明会LIVE」を、全国の就活生に向けて実施。さらに、2020年5月にはYouTube企業説明会「ONE CAREER SUPER LIVE」、2020年10月にはテレビ局とのコラボイベントを開催するなど、アップデートを重ねながら走り続けた。 「当時は、オフライン事業の一時休止と並行して動画事業の立ち上げをやらないといけなかったので、とにかく大変でしたね…。いかにマイナスを出さずにオフライン事業の収拾をつけながら、動画事業で利益を上げていくのか。多分どこの会社さんも同じ状況だったと思うのですが、それを最速でやっていくのがしんどかったです」 当時はとにかく猪突猛進で、目の前のことに必死だったと話す多田氏。最速で動画事業の立ち上げを実現したものの、当時の組織の状態には課題を感じていたという。 「動画事業の立ち上げのときは、とにかく自分が闇雲に先頭を走っているような状況で、メンバー側もただただ、走り疲れているという状態に陥っていました。1on1でメンバーと向き合うようにはしていたのですが、一向に状況は好転しませんでしたね……」
全部をやろうとして疲弊。やらないことを明確に決める必要があった
動画事業の立ち上げには成功したものの、当時の組織状況にはもっと改善の余地があったのではないかと、多田氏はモヤモヤを抱えていたという。その後、経営企画部への異動が大きな転機となる。 「経営企画部に異動したことで、会社全体を俯瞰して見ることができるようになりました。それによって、会社のシステムとそれに対する人の動きが把握できるようになり、会社全体の戦略の中で、事業が手段として存在することを改めて理解できたんです。 動画事業に立ち返ってみると、当時は長期的な展望を描けていなかったんですよね。そのため、メンバーもどこを目指しているのかわからないまま走ることになってしまい、今考えれば途中で疲弊してしまうのは明らかでした。 動画事業の立ち上げ時は、私自身『とにかくやらなきゃ』という思いが強すぎて、プレイヤーとしてがむしゃらに走っていましたが、リーダーという存在はやはり、メンバーよりも高い視座を持っていないとチームを成立させられないんですよね。例えば、走りながらだったとしても、短期・中長期の戦略ごとに必要な定点観測を行い、それぞれの目的に対する現在のアクションがズレていないか立ち返る時間を持ち、軌道修正を行う。そういった、現在地がゴールから逆算されたポジションに立てているのかどうか俯瞰する機会を、チームに対して提供し、習慣化させなければ、組織を導くことができず、メンバーと共に溺れてしまうことになります」 その後、経営企画部から事業部に戻り、ITエンジニアに特化した就活サイト「ONE CAREER for Engineer」の立ち上げを任されたとき、多田氏は戦略を指し示すだけでなく、やらないことも明確に決めたと話す。 「『ONE CAREER for Engineer』の立ち上げでは、何が重要でどこにリソースを投下するべきかを明確にし、やらないことも決める必要があると考えました。 特に新規事業の立ち上げやスタートアップ企業などは、目の前のことに必死すぎて周りが見えなくなりやすい。中長期的な企業成長、事業の拡大を目指すためには、将来のビジョンをしっかり見据えながら、やるべきことに注力するだけでなく、やらないことを明確化することも必要だと感じます。 やらなきゃいけないことが増えると、組織やメンバーのエネルギーが分散され、事業を推し進める力が弱まってしまいます。また、組織の方向性が明確に定まっていなければ業務の取捨選択をすることも難しい。だからこそ、指針を定めることに加えて『やらなきゃいけないこと』の棚卸しをし、『やるべきこと』への整理をしてあげることが重要です。分散していたエネルギーを集中させ、推進力を強める。そのために重要なのが、やらないことを決めるというリーダーのドラスティックな選択なんです」