「渡航中止勧告」のモスクワは本当に“危険”な地域…? まばゆい電飾、安い物価――モスクワの「へ~」
日本の外務省がモスクワを「渡航レベル3:渡航中止勧告」とし、ロシアが「非友好国」に指定するなど、険悪なムードが漂う日本とロシア。両国の関係は今後どうなってゆくのだろうか? モスクワは本当に“危険”なのか? ロシア人は日本をどう見ているのか? 日々のニュースでは紹介しきれなかった「モスクワ」の一端を、駐在記者の視点から点描してみたい。 (NNNモスクワ支局 東郷達郎)
■電飾オブジェが彩るモスクワの年末年始
年末のモスクワは、まばゆいばかりの電飾のオブジェに彩られる。新年の祝いと1月7日のロシア正教のクリスマスのための飾り付けだ。北緯55度の街(ちなみに札幌は北緯43度)は、この時期、日の出が午前9時頃、日の入りが午後4時頃で、日の当たる時間が短い。沈みがちな気持ちを奮い立たせるためには、明るい光が必要なのだろう。 モスクワ市の発表によると、街には4900以上の電飾オブジェと1000本以上のクリスマスツリーが飾り付けられているのだという。日本から見れば、とても「戦争当事国」とは思えない光景かもしれない。でも、これが、日本の外務省が「渡航レベル3:渡航中止勧告」としているモスクワの「今」だ。
■ちょっと、どうなの?…アメリカ大使館前の電飾
2023年末、在露アメリカ大使館の前には新たなオブジェが設置された。「Z」「V」「O」が照明で輝いている。「Z」は「勝利のために」、「V」は「力は正義にあり」、「O」は「勇敢な(形容詞)」。紛れもなくロシアで「特別軍事作戦」と呼ぶウクライナへの軍事侵攻のオブジェだ。こうしたメッセージを掲げるとは、敵対するアメリカへの嫌がらせとしか思えない。なぜ、“大国”を自認するロシアが、こんなことをするのか…ナゾだ。 プーチン大統領は2023年12月14日の「国民対話・大規模記者会見」の席で、こんなことを言った。「アメリカは世界にとって、重要かつ必要な国であると考えている。関係を構築する準備はある」 電飾オブジェで“嫌がらせ”をしながらの“ラブコール”。構ってもらいたい思いが透けて見える。ちなみに、こうした“嫌がらせ”は、同じ西側であるはずの在ロシア日本大使館の前にはない。