コロナ禍後も続く「子どもの嗅覚障害」深刻事情、放っておいたら一生が台無しに【専門家が警鐘】
視覚や聴覚などが、視床や大脳皮質を経て大脳辺縁系へ到達するのに対し、嗅覚は、嗅神経からダイレクトに脳内の大脳辺縁系へとつながる。大脳辺縁系は情動の表出、食欲、性欲、睡眠欲、意欲などの本能、喜怒哀楽、情緒、神秘的な感覚、睡眠や夢などを司る。 ある特定のにおいを嗅いだ瞬間、瞬時に過去の記憶や体験、感情が蘇ったことはないだろうか。嗅覚は、ダイレクトに感情や脳を支配することで、人間が、ほぼ本能レベルで危険などに反応できる仕組みになっている。 ● 「におい」がわからないと 食べ物は全然おしくない さらに、安全な生活が担保された文明社会では、食のおいしさを左右する嗅覚の役割は、危険の察知以上に重要とも言える。 「舌で感じることができるのは甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つだけ。それ以外は、風味がわからなければ感じることができません。なので、鼻が利かないと味がわからなくなり、何を食べてもおいしくなくなって、食欲も減退し、調理にも支障をきたすことがあります」(森氏) 試しに、オレンジジュースとリンゴジュースを、目を閉じて、鼻をつまんで飲んでみて欲しい。驚くべきことに、ただの砂糖水としか認識できない。我々は、鼻でも食物を味わっているのだ。ただちに生命を危うくしなくても、人生におよぼす影響は大なのである。 嗅覚障害は3つのタイプに分類できる。 ・気導性嗅覚障害――鼻の中のにおい成分の通り道に問題が生じて起きる ・嗅神経性嗅覚障害――脳と鼻をつなぐ嗅神経に異常が生じて起きる ・中枢性嗅覚障害――においの情報を処理する脳に問題が生じて起きる ただしこの3つ、同時に全部起こることもあれば、2カ所だけ起こっていることもあり、それぞれが単独で起こるとは限らない。 「気導性嗅覚障害と嗅神経性嗅覚障害が同時に起こっているケースをインターネットでたとえると、パソコンが壊れていて、Wifiもつながらず、情報が送れない状態です」」(森氏)