コロナ禍後も続く「子どもの嗅覚障害」深刻事情、放っておいたら一生が台無しに【専門家が警鐘】
● 生命に別条はないからと軽視 コロナ禍後も続く嗅覚障害の苦しみ 大方の日本人にとって、新型コロナウイルス感染症は過去の記憶になりつつあるが、依然として、なかなか収まらない「後遺症」に悩まされている人は少なくない。 【この記事の画像を見る】 コロナ後遺症の症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下など、代表的なものだけでもこんなにある。 その中でも、東京慈恵会医科大学・耳鼻咽喉科学教室の森恵莉氏が問題視しているのが嗅覚障害だ。特に、10代20代の若年層が、嗅覚外来にアクセスできていないことに警鐘を鳴らす。 森氏は2020年、厚労省研究班の一員として、「新型コロナウイルス感染症による嗅覚、味覚障害の機序と疫学、予後の解明に資する研究」に参加し、コロナ後遺症による嗅覚障害、味覚障害の発生頻度や特徴について調べた。 結果、病院、ホテル療養中の20歳から59歳までの、無症状、軽症、中等症の患者の58%に嗅覚障害を、41%に味覚障害を認めた。嗅覚障害、味覚障害ともに男性よりも女性に高頻度に出現し、若年者ほど出現頻度が高かったという。 「臭いがわからなくても生命に別条はないからと、本人も親も軽視して、症状を悪化させている可能性があります。私の外来には、たまたま親御さんの理解があって受診できた若い患者さんが来ますが、実際は若年層の患者さんはもっと沢山いるはずです」(森氏) ● リスク回避にも役立つ「におい」 人生に及ぼす影響は大きい 確かに、嗅覚はただちに生命を脅かすものではないかもしれない。 だが嗅覚には重要な役割がある。たとえば危険を知らせる役割。原始時代においては、敵や危険な動物の接近、食物の安全性、災害の予兆などをにおいで察知し、身を守っていたという。 2024年2月には、理化学研究所と東京大学が、傷ついた魚の皮膚から放出され、周囲にいる仲間の魚に危険を知らせる「嗅覚警報物質」を発見したことを発表した。人類も実は、そんな物質を放出していて、原始人は嗅ぎ分ける能力を持っていたのではないだろうか。 また現代においても、火事やガス漏れ、食品の腐敗臭などのにおいなどを察知できないと、迅速に身を守る行動がとれず、命に危険が及ぶケースが考えられる。料理人やソムリエのみならず、医療介護職や保育士、警察や消防関係も含め、嗅覚が重要な職業は意外にもある。