ガールズバー題材の映画“天使たち” 実際に働き脚本執筆…監督の木村ナイマさん「すごく孤独な世界だった」
新宿・歌舞伎町のガールズバーに潜入取材しながら脚本を書いた長編映画「天使たち」が11月上旬に和歌山県田辺市で開かれた若手映画監督の登竜門「田辺・弁慶映画祭」のコンペティション部門で、映画.com賞を受賞した。 【写真】映画「天使たち」を製作する木村ナイマさん スタイリッシュな映像と音楽を織り交ぜて描くのは、ガールズバーを舞台にした若者たちの生態と闇だ。「女の子たちは華やかに着飾っておしゃれするために、あまり深く考えずにお金が稼げるからと働き始める。でもそれは本心から望んでいることなのか…」 想像力を欠いたまま危うい世界に足を踏み入れる様子は、最近相次いで事件化し、報道される闇バイトなどにも連なる。 「SNSの普及のせいか私たちの世代って華やかな生活がスタンダードだと考えがち。それでいて手軽にお金が稼げることに疑いもなく手を染めてしまう」 2001年愛知県生まれ。中学、高校を福岡で過ごした。上智大文学部新聞学科に進学し上京。形態は違うが自身も時給の高さに引かれて飲酒しながら男性を接客するアルバイトを経験した。 悩みやコンプレックスを抱えた女性をオムニバス形式で描いた漫画「明日、私は誰かのカノジョ」を読んで自分の体験と重なると感じて本作を構想。さらに歌舞伎町で実際に働いて脚本に生かした。「友達がいなくて自分を大事にしていないから他人のことも大事にできない子が多い。すごく孤独な世界だった」 自身は大学の友人たちに救われて映画監督の道に踏み出せた。「自分のように他者と絆を築くことで救われる人が増えてほしい」。映画の終盤では、ガールズバーで働く女性2人が生まれ変わりの儀式のようなある行為を経て、新しい一歩を踏み出す。そこには若き監督の祈りのような希望が投影されている。 (内門博) ◇「天使たち」は、30日午後7時から福岡市中央区那の津のKBCシネマ。デビュー作の短編「ファースト・ピアス」の上映と、木村監督らによるトークショーもある。料金2千円。