五輪で注目のボルダリング 考える力も磨ける知性の競技 保育・教育施設などで設置進む
東京オリンピックから正式種目となり、すっかり定着した「ボルダリング」が保育園や幼稚園、小学校などで広がりを見せている。暑さを気にすることなく室内で思い切り遊べ、同時に体力や知力、協調性も身につくとされる点が人気の理由。2017年の事業開始から子ども向けボルタリング遊具を700件以上設置している「エンジョイクラブ」(大阪市)の門脇徹代表に今後の可能性を聞いた。 【写真】なんと、お寺に設置されたケースも
東京五輪で正式種目となり、知名度アップ
「ボルダリング」は東京五輪で新種目として採用されたスポーツクライミング3種目のうちのひとつ。「ホールド」と呼ばれるカラフルな突起物に手や足を掛け、壁を登っていく競技だ。東京五輪で日本人選手がメダルを獲得したことで、現在の競技人口は約60万人を突破。今回のパリ五輪でも注目競技のひとつとなっていた。 今回、取り上げるのは子ども用のボルダリング。一時はコロナ禍で需要が停滞していた時期もあったそうだが、ここに来て注目度が一気にアップした。その理由として真っ先に挙げられるのが昨今の酷暑だ。「エンジョイクラブ」代表の門脇さんが言う。
暑さ対策にもなり、場所を取らないのが利点
「この暑さ。屋外スポーツでは熱中症に気を配らなければいけませんが、室内にボルタリングを設置すれば、どんな天候にも対応でき、大きなスペースも必要ないことから冷房のきいた部屋で思い切り遊ぶことができる。それが一番の強みでしょう」 そもそもエンジョイクラブがこの事業を始めたのは2017年のこと。きっかけは、門脇さんがある施設を訪問した際にボルダリングが設置されており、ゴールを目指して試行錯誤しながら壁を登っていく健気な子どもたちの姿に感銘を受けたからだった。 「頑張る子どもたちを応援したい」という思いから業界最安値を掲げ、これまでボルダリング遊具を北海道から沖縄まで全国で700件以上も設置してきた。
体力がつき、知力やコミュニケーション能力もアップ
「保護者の方からは”うちの子も、こんなに登れた”と言って喜ばれています。ボルダリングの良さは基礎体力の向上はもちろん、ゴールにたどり着くにはどうしたらいいか、頭も使うところ。登り方を教え合うことで子ども同士で助け合いの心も育まれる。また発達障害の子どもは弱かった握力が鍛えられて筆跡が強くなったとか、歯を食いしばるから咀嚼力がアップし、食べこぼしが減ったという報告も受けてます」 門脇さんを勇気づけてきた現場の声。実際に東京都港区のようにすべての区立の小学校と幼稚園にボルタリング施設を設置するなど、その効果を認めており、導入に踏み切る自治体も増えている。 しかし、門脇さんによると最近では公共施設のみならず地域のイベントや病院、ホテル、車のショールームなど家族で利用するような場所での需要も増えているそうだ。さらに、個人の自宅に設置してほしいとの要望もあると言う。