「相続で不動産を共有」した場合…あなたの行動はどこまで自由?共有者とのトラブルを未然に防ぐ“3つの具体策”
不動産を共有している場合、所有者間の権利と義務は非常に複雑です。「共有持分」とは、複数の人が同じ不動産を所有する際の各自の権利割合を指し、その割合は必ずしも均等ではありません。例えば、一方の共有者が多くの持分を持っていても、その意見が全ての決定において優先されるわけではありません。そのため、誰が何を決定できるのか、また何が全員の同意を要するのかを理解することが重要です。この記事では、共有不動産における行為の分類やトラブルを未然に防ぐための対策について詳しく解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
不動産を共有している場合……単独で決定できること・できないこと
不動産の共有持分とは、1つの不動産を2人以上の所有者で共有する場合における各共有者の所有権の割合のことです。この割合は、共有者間で常に均等であるとは限らず、例えば共有者Aが2/3を所有し、共有者Bが1/3を所有するというケースもあります。 また、不動産を共有しているからといって、何でも共有者全員と話し合い、その都度合意を得て、様々な行為について取り決めなければいけないわけではありません。 (1)単独で可能な行為 次のような場合は共有者単独で行えます。この行為は持分割合に関係なく、共有者が自由に行えます。 ・保存行為:現状維持のための修繕(例:壁紙を交換、雨どいの補修等) ・使用行為:共有不動産全体の使用(例:自ら居住する等) (2)過半数で可能な行為 次のような場合、共有持分の過半数の同意が必要です。 ・利用行為:物件を共有者以外に利用させる行為(例:短期的に賃貸物件として活用する等) ・改良行為:物件の価値を上げる行為(例:リフォーム等) (3)全員の同意が必要な行為 次のような場合は共有者全員の同意を要します。 ・処分行為:共有不動産の権利関係に大きな影響を与える行為(例:売却、大規模修繕、抵当権の設定、長期間の賃貸契約締結等)
不動産の共有者間でトラブルが起きないようにするには?
相続した共有不動産は、現状維持のための修繕や短期的な賃貸契約(土地5年、建物3年)ならば、共有相続人間で揉めることはあまりないでしょう。 しかし、売却や大規模修繕、長期間の賃貸契約締結等のような処分行為では、話し合いがつかない事態も想定されます。ここでは共有者間でトラブルが起きないようにする対策を解説します。 1.現物分割 共有不動産をそのままの形で各相続人が引き継ぐ分割方法です。相続したのが土地の場合、その土地を分筆してそれぞれ取得します。 例えば被相続人(故人)の土地を3人の子が相続した場合、持分割合1/3ずつ共有しているならば、この土地を1/3ずつ分筆し、各相続人が1筆の土地を所有します。それぞれ分割すれば、取得した土地を処分するのは各所有者の自由なので、共有者間で揉めることはありません。 ただし、狭い土地ではこの方法が行い難く、共有不動産が建物の場合は不可能です。 2.代償分割 共有不動産を相続人1人が引き取り、他の相続人へ代償金を支払う方法です。例えば6,000万円の価値がある共有不動産を、相続人A・B・Cが持分割合1/3ずつ共有している場合、相続人Aが不動産全部を取得してB・Cに2,000万円ずつ代償金を支払います。 この分割方法は共有不動産が土地でも建物でも利用できます。ただし、引き取る相続人にある程度の資力がないと、代償金の支払いが難しいという一面もあります。 3.換価分割 こちらは共有不動産を売却し、売却で得たお金を各相続人の共有持分に応じて分配する方法です。 換価分割は、下記の場合に検討するべき方法です。 ・各相続人は既に独立して住居があり、共有不動産を所有し続けても誰も利用しない ・共有不動産として相続したが、その不動産がとても離れた場所にあり不便 例えば共有持分割合が相続人3人で1/3ずつ共有していた場合、6,000万円の価値がある共有不動産を売却したら、その3人が2,000万円ずつ取得することになります。 この分割方法ならば、相続人の誰かが金銭的な負担を負うこともなく、売却利益を得られます。ただし、共有不動産が家族にとって思い出深い土地や建物なら、売却に抵抗を感じる相続人もいることでしょう。