ゴミが散乱、路上生活者の街から高級ホテルもある観光拠点に 変わりゆく西成・あいりん
「日雇い労働者の街」として知られる西成・あいりん地区。地区のイメージアップを目指す平成25年の「西成特区構想」以降、街にあふれていた不法投棄は減り、安全対策も進む。さらに近年、付近には高級ホテルが進出し観光の拠点としての側面も加わった。12月1日には日雇い労働者支援の複合施設「あいりん総合センター」の敷地内で生活していた路上生活者を退去させる強制執行も実施された。あいりん地区はどう変わったのか、年の瀬の街を歩いた。 【写真】美化活動が進んだ三角公園 12月26日午後2時ごろ、地区内の憩いの場である萩之茶屋南公園(通称・三角公園)に向かった。周辺の路上では、缶ビールを片手に約10人の男性がドラム缶にたいた火を囲み暖を取っていた。 公園内のベンチに腰掛け、たばこを吸っていた男性(80)に話を聞くと、かつての公園内は、路上生活者がブルーシートをはって暮らしたり労働先の建築現場で出た不要な木材が不法投棄されていたり「ぐちゃぐちゃやった」という。だが、特区構想以降こうした光景は一掃され、「一気に街はきれいになった」と話す。 確かに歩いていても、ゴミの散乱や、路上生活者が暮らす面影はあまりなかった。むしろ、清掃の仕事をあっせんされた日雇い労働者らが、たばこの吸い殻などをトングで拾う姿が各所で目に留まり、街の美化への強い意識を感じた。 1日に路上生活者の立ち退きが強制執行されたあいりん総合センター周辺では、不法投棄されていた家具や電化製品の山も撤去された。現在では高さ約3メートルの白いフェンスがセンター周囲を囲い、かつての雑多な面影はもうない。 令和4年には高級旅館などを手がける「星野リゾート」がJR新今宮駅周辺にホテルを開業するなど、若者や外国人の姿も多くみられる。あいりん総合センターの近くにも複数のホテルが立ち並び、スーツケースを引き一人で歩く若い女性や外国人観光客が行き交っていた。 だが、住人からは高齢化を嘆く声も。あいりん地区で30年以上暮らしているという70代男性は「日雇いの仕事が減り、西成に来る人が減った。最近は年寄りが増えるばかりで活気がなくなってきている」と話す。令和2年の国勢調査では、西成区の65歳以上の人口は大阪市内で最多の39・2%。街には「介護サービス」の看板を出した訪問介護の事務所が立ち並び、手押し車で歩く高齢者と何度もすれ違った。 かつて労働者の街として活気にあふれていた街、西成。街の美化が進み、観光客の姿も増える一方、高齢者の増加とともに「福祉の街」の側面も増している、そう感じた。(木下倫太朗)