5月の実質消費支出が予想外の減少、2カ月ぶり-景気の先行きに暗雲
(ブルームバーグ): 5月の家計支出は市場予想に反して2カ月ぶりに減少した。個人消費が4-6月期の景気回復の原動力とならないリスクが高まった。
総務省の5日の発表によると、インフレ調整後の二人以上の世帯の実質消費支出は前年比1.8%減の29万328円だった。市場予想の0.3%増を下回った。前月比では0.3%減少した。
物価高などで食料が3.1%減となったほか、教養娯楽サービスも宿泊料や円安が影響した外国パック旅行費を中心に8.4%減少し、全体を押し下げた。一方、教育と自動車への支出は増加した。
今回の結果は、個人消費が回復傾向にあるという日本銀行の見解に疑問を投げかける可能性がある。今年度の大幅な賃上げによってもたらされると期待されている消費の押し上げ効果は、まだ表れていない。
S&Pグローバルマーケットインテリジェンスの田口はるみ主席エコノミストは、「消費がまだまだ弱い状況が続いている。実質賃金のマイナスが続いている上に、物価の上昇が続くと消費者は思っている」と指摘。消費が低迷する中でコスト高の価格転嫁が進まない面もあるとし、日銀が「追加利上げにゴーを出せる状況ではない」との見方を示した。
鈴木俊一財務相は閣議後会見で、消費が停滞していることに関連し、食料やエネルギーを輸入に頼る日本において「円安の要因が物価高に大きな影響を与えている」と指摘。一方、記録的な今年の賃金上げや6月から始まった定額減税が「消費を刺激、長年染みついてきたデフレマインドを払拭するきっかけにもなるのではないか」とし、効果を見極めていく必要があると語った。
連合が3日発表した2024年春闘の最終回答集計によると、平均賃上げ率は5.10%と33年ぶりの高水準となった。組合員300人未満の中小組合の賃上げ率は4.45%だった。厚生労働省の毎月勤労統計調査では、物価変動を反映させた実質賃金が4月まで25カ月連続で前年割れとなっている。5月の結果は8日に公表される。