【給与が下がったときの天引き額】職場の事業縮小で残業がほぼなくなる見込みです。残業代がなくなったら社会保険料も安くなりますか?
出典)厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について」より筆者作成 ・保険料の計算式 給与総額×保険料率 なお、上記の「給与総額」には手当や賞与を含みます。
社会保険料が見直されるタイミング
会社から支給される給与には、残業代のように、そのときの働き方によって変動する手当も含まれます。そのため、残業代の支給状況によっては、毎月の給与が増減します。しかし、毎月の給与の変動に応じて、社会保険料も毎月増減するわけではありません。 社会保険料の見直しがされるタイミングは、「定時決定」と「随時改定」の2つがあります。 ■定時決定(年1回) 定時決定は、年1回、7月1日時点で勤めている会社において、4月、5月、6月の3ヶ月間の報酬月額に基づき、標準報酬月額を決める方法です。 支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)ある月の総支給額の合計から、平均額を「報酬月額」として算出し、該当する等級の標準報酬月額が決まります。ここで決定された標準報酬月額が、基本的にその年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額となります。 そのため、4月、5月、6月の総支給額の増減が、9月からの社会保険料に反映されることになります。 時折、「3月から5月はあまり残業をしないほうがよい」といった声が聞かれます。これは、一般的には当月の残業が、翌月に支給される給与の残業代に反映されることが多いためでしょう。 3月から5月の残業が多いと、4月から6月の給与に含まれる残業代が多くなります。結果、4月から6月の標準報酬月額の増加によって「定時決定」による社会保険料が高くなってしまうので、それを避ける狙いがあると考えられます。 ■随時改定(報酬額に大幅な変更があった場合) 「定時決定」の年1回の見直し以外にも、年の途中での昇給や降給、固定的な手当(住宅手当など)の見直しなどにより、大幅に報酬額が変更となった場合、標準報酬月額も見直される場合があります。これを「随時改定」といいます。随時改定が行われるのは、次の3つの条件を全て満たす場合です。 ・昇給または降給等により、固定的賃金に変動があった。 ・変動月からの3ヶ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。 ・3ヶ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。 出典)厚生労働省「随時改定(月額変更届)」より筆者作成 上記の全ての条件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4ヶ月目(例:9月に支払われる給与に変動があった場合、12月)から、標準月額報酬が改定されます。