午前中に「有休」を使ったのですが、翌日の会議資料作成のために2時間「残業」しました。上司に「午前中休んだから残業代はつかない」と言われましたが違法ですよね? 残業代は払われないのでしょうか?
一定の要件を満たした会社員は一般的に年休や有休と呼ばれる「年次有給休暇」を取得できます。実際に勤務しなくても賃金が発生し、体調を崩して働けない時だけでなく、休みをとって旅行をするといった使い方もできます。 有休は「1日単位」だけでなく、会社によっては「半休」や「時間休制度」が導入されて午前や午後、あるいは1時間単位で休めるケースもあります。臨機応変に休みをとれるのはうれしい一方で、休んだことで仕事がたまって就業時間内に終わらせるのが難しいこともあるかもしれません。 本記事では、半休制度を活用して「午前休」を取得して午後から勤務したものの、翌日の会議資料作成のために2時間残業したケースを想定します。このような場合は残業代がつかないのか、それとも請求できるのでしょうか。 ▼有給休暇の取得に会社の許可は絶対に必要?「繁忙期」でも取得できるの?
有給休暇は実労働時間に含まれない
「年次有給休暇を取得すると実際に働いたものとみなして処理される」と考えている人もいるかもしれませんが、有給休暇は実労働時間には含まれません。欠勤ではなく法定労働時間を勤務したものとして給料の計算はされますが、実際に働いているわけではないからです。例えば「1日有休」を取得すると、当日実際に勤務した時間は「ゼロ」です。 そもそも有給休暇は本来必要な労働の義務を免除して心身のゆとりや疲労回復などにつなげるために付与されるものであり、実際の労働時間に算入するのは趣旨に反するといえるでしょう。労働基準法でも「有給休暇を実労働時間に含める」趣旨の内容は規定されていません。
有休取得して残業したら「残業代」は発生する?
今回のケースのように、1日のうちの部分的に有休を取得した場合、通常よりも業務が遅れて就業時間を超えて残業しなければならないこともあるでしょう。その場合は一般的に残業代といわれることが多い割増賃金を会社側が支払わなければならないのでしょうか。 結論からいえば、実際に勤務した時間と法定労働時間の関係によって割増賃金の支払いが必要かどうかは決まります。例えば、今回は以下のようなケースを想定してみましょう。 ・所定労働時間:9時から18時(休憩1時間) ・午前休取得時間:9時から14時 ・午後の労働時間:14時から20時(実労働時間6時間) 通常は、実際に働いた時間が法定労働時間を超えると25%以上の割増賃金を支払わなければなりませんが、今回は6時間なので基本的に支払う必要はありません。一方で、所定労働時間を超えて勤務しているので、会社側は「通常の賃金」を支払う義務があります。 つまり一般的に「残業代」と呼ばれる割増賃金を受け取ることはできませんが、割増がない通常の賃金は働いた分だけもらえます。