フランス芸術界に衝撃を与えた告白 50代の権力者と10代少女は“恋人”? 性的同意は「免罪符」ではない
文学少女と偉大な作家の“恋愛関係”
複雑な家庭環境で育った13歳の少女ヴァネッサは、ある夜、母親に連れていかれたパーティーで、作家のガブリエル・マツネフと出会う。50歳のマツネフは自作のなかで10代の少年少女との性行為を公言する悪名高き人物だったが、まだ幼い文学少女には偉大な作家としか見えていない。マツネフは、自分を憧れの目で見つめる少女に狙いを定め熱烈なアプローチを開始する。誰も相談相手がいないヴァネッサは、14歳になった頃、ついに彼の要求を受けいれ、性的関係を持つようになる。だが、その有害な関係が徐々に彼女の心を壊していく。
「芸術」の名のもとで許される違法行為
映画は、ガブリエル・マツネフの卑劣な手口を、実にわかりやすく紹介する。優しい父親のように振る舞い、幼い頃から父親が不在だった少女の心を虜にする。巧みな言葉を操り、大人と性行為をするのは異常なことではない、むしろこんな経験ができるのは特別な存在だからだと思い込ませる。さらに関係を世間の目に晒すことで、少女を周囲から孤立させ、自分だけに依存させる。こうして、50歳の男と14歳の少女の支配関係はいとも簡単にできあがる。 驚くのは、ヴァネッサとマツネフの関係が、決して世間に秘められた、いわゆる禁じられた関係ではなかったことだ。 もちろん成人した大人が14歳の子供と性行為をするのは、当時のフランスにおいても違法な行為。だがガブリエル・マツネフは、アジアで大勢の少年たちを買春し、ヴァネッサと同じような年頃の少女たちを大勢「恋人」にしていたことを、隠さず本に記していた。さらにその作品は文学として多くの人を魅了し、彼はタブーを恐れない芸術家として讃えられていた。芸術の名のもとで、許されざる違法行為が公然と許されていたのだ。 周囲の大人たちは、幼い少女が次々に作家の餌食になっても、「偉大な芸術家の創作活動に必要なこと」だとみなし、意に介さない。ヴァネッサの母親もまた、最初こそ「彼は小児性愛者だ」と激怒するものの、結局は作家の名声に気をよくし、娘を男のもとに差し出してしまう。 さらにここには恐ろしい罠がある。ヴァネッサとマツネフとの関係は、必ずしも暴力によって無理強いされたものだとは言えない。ふたりは当時、たしかに恋人同士としてつきあっていて、セックスをしたことも、小説のモデルにしたのも、すべてヴァネッサの同意を得て行ったことだとマツネフは主張する。その証拠に、ヴァネッサからの熱烈な愛が綴られた手紙もあるではないかと。書籍と映画の両方のタイトルが指すように、少女が当時発した「同意」が男への免罪符として利用され、少女自身を長年苦しめることになる。