水素・アンモニア利用拡大へ、大手商社が拠点整備を本格化…「輸入頼み」経済安保上の課題残る
需要創出
水素の製造では、国内で水を電気分解してつくる方法も検討されているが、大量の電力が必要で、現状では輸入に頼らざるを得ない。既存の化石燃料と同様に、輸入に依存する構造となる。「水素社会が実現してもエネルギー安全保障上の課題は残る」(商社幹部)との指摘もある。
需要の創出も不可欠となる。製鉄業界は石炭の代わりに水素を使って鉄鉱石から酸素を取り除く「水素還元製鉄」を目指すが、技術面でのハードルは高い。日本政策投資銀行の梅津譜(ひろき)氏は「価格差や拠点整備の補助だけでなく、水素を使う事業者側にも継続的な政府支援が必要だ」と指摘している。
製造現場、徐々に動き…化粧品・コーヒー・ウイスキー
国内の製造現場では、水素を活用する動きが徐々に広がっている。
コーセーが2026年に稼働する山梨県南アルプス市の化粧品製造工場では、熱源の燃料として水素を利用する予定だ。原料となる水や油を混ぜ合わせる時に加熱する必要があり、現在の工場では都市ガスを使っていた。
太陽光発電で水を分解して水素を発生させる仕組みで、小林一俊社長は「水素の利活用拡大などを通じ、社会課題の解決につなげたい」と話す。
UCCも静岡県富士市のコーヒー製造工場で、水素で豆を焙煎(ばいせん)する機械を導入する。
サントリーホールディングスは、ウイスキーを蒸留する工程での活用を目指している。