CCS・CCUSの理想と現実、日本の脱炭素政策に潜む「落とし穴」とは
脱炭素政策の誤解
ボリュームの大きいVRE、電化、エネルギー効率化に共通しているのは、ほぼ実用化されているということである。これに青緑色で表されるBehavior(行動変容、5%)を加えると、全体のほぼ7割となる。 残りの3割は、まだ技術的に確立していない。その中に5%の水素に加えてCCUSが含まれている。現状ではCCUSは実用化、商用化された技術のカテゴリーには入っていない。マスコミもそうなのだが、日本政府の脱炭素政策に登場する各種の技術は、実証や開発レベルから実用化、商用化されているものなどがごっちゃに示されることが多い。 どの方法を使って脱炭素を達成するかは大変重要で、その技術が、開発中なのか、実装されているかによって、実現可能性がまったく違ってくる。
CCUSに“頼りすぎている”日本政府
図3は、資源エネルギー庁が、必要とされる開発中の脱炭素技術を図解したものである。緑の枠は、そのままCCUSの利用を示し、黄緑枠は、CO2の直接回収や利用技術を示している。 繰り返すようだがいずれも開発中の技術で、CCUS以外にも、ペロブスカイト太陽電池や水素還元法の製鉄、人口光合成などの有名な技術が並んでいる。実装化への距離はそれぞれであるが、いずれも“一種の夢の技術”でもある。 図4は、世界でほぼ日本だけが推進しているアンモニア火力発電(混焼、専焼)や船舶での燃料利用などを想定する脱炭素アンモニアの製造スキームである。ただし、よく見るとそのプロセスで必要な水素を含め、アンモニアは海外での製造を念頭に置いている。 図の左上に、「資源豊富な海外:製造」とある。製造方式は2つで、再エネ電力を使いグリーン水素を造る下のルートが基本であるが、どうしても化石燃料が必要なようで、天然ガスなどの水蒸気改質による上のルートが用意されている。ただし、このままでは脱炭素アンモニアにならないので、CCUS(赤枠内)でCO2を除去した水素(いわゆるブルー水素)を利用することになっている。 アンモニア、水素の製造地を海外にして、エネルギー安全保証はどうなるのか、という突っ込みは取りあえず横においても、実装化されているVREを使わずに、開発途上技術のCCUSで脱炭素の水素を造るのはいかがなものであろうか。技術だけでなく、コスト競争力も現状ではまったく期待できない。 背景にあるのは、火力発電をなるべく長く使いたい業界の強い意向である。“原発の最大限利用”と似た構図がそこに見える。