「頭が悪くなる本の読み方」をしている人が多すぎる! 必ず知っておくべき「絶対にしてはいけない読書」
「本に沿って文字を読む」だけではダメ
続く「習字の練習」の比喩も大変分かりやすいものです。習字の先生自身は、当然のことながら自分で文字を書いています。ですが、それをなぞる生徒たちは、別に自分自身で文字を書いているわけではないのです。「薄い線の上をなぞる」という行為と、「自分で文字を書く」という行為は、やはり別物です(例えば、ロシア語の文字をなぞれるからと言って、自分自身で何も見ずにロシア語の文章を書けるわけではありません)。 つまり、少なくとも「本に沿って文字を読む」という行為だけでは、自分自身で考えていることには全くなっていないのです。この比喩から私たちは、「自分の頭でものを考えるとは、自分自身で文字を書くこと(他人の思想を単に反復するのでなく、自分の思索を展開すること)である」という教訓を得ることができます。 こうしたことを振り返りもせずに、他人の書いた文字ばかりをなぞっているのでは、それは「その文字の通りになぞらされている(考えさせられている)」に過ぎないのです。こうした意味で、単に本を読むだけでは、私たちは何かを考えさせられているという隷属的な状態に留まり、結果、自らの思考力や洞察力はどんどん失われてしまうことになります。 さらに連載記事<アタマの良い人が実践している、意外と知られてない「思考力を高める方法」>では、地頭を鍛える方法について解説しています。ぜひご覧ください。
山野 弘樹(哲学研究者)