日産ローレルHT2000SGX(昭和47/1972年4月発売・KHC130型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト069】
街の走り屋にもウケたゴージャスさがポイント。独特のスタイリングで根強い人気を得ることに
この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第69回目は、ハイオーナーカーでありながら走りも楽しめた、日産ローレルHT2000SGXの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より) 【写真はこちら】2ドアハードトップの流麗なリアビューが特徴。ランプが下方にまとめられ丸みを持ったテールラインが「ブタケツ」ローレルの所以らしい。(全10枚)
日産ローレルが初めてのフルモデルチェンジを敢行したのは昭和47年(1972年)4月のことだった。初代モデルと同じようにバン仕様をもたない、純粋なハイオーナーカーとして設計され、ボディサイズや車格もセドリック並みにグレードアップされた。 スタイリングはシャープなウエッジシェイプを特徴としているが、サイドビューに上品なアクセントラインを添え、洗練された大人の雰囲気をアピールした。全体的なシルエットとしては「ケンメリ」スカイラインと共通する部分もある。 ボディタイプはフォーマルな4ドアセダンと、高級なパーソナルムードを演出する2ドアHTが設定され、後者のリアビューは凹面構成の凝ったラインだった。この独特なデザインによって「ブタケツ」というあまり品のよくない? 愛称を得てしまうことになるのは皮肉なことだったのかもしれない。 発売当時のパワーユニットは直4の1.8L G18型と2L G20型、そして2ℓ直6のL20型がラインナップされていた。トップモデルのSGXに搭載されたのがツインキャブのL20型で125ps/6000rpm、17.0kgm/4400rpm(プレミアム 仕 様 は130ps/ 17.5kgm)のパワー//トルクを絞り出していた。 L20型はフェアレディZやスカイラインGT-Xにも搭載されたエンジンだ。言うまでもなく日産の屋台骨を支えた名機である。ただ、SOHCであることは仕方ないとはいえ、すでに吸排気の方向が別々になっているクロスフローが当たり前になりつつある時代、吸気と排気を同方向から行うカウンタフローは旧弊な感もあった。エンジンの吹け上がりもシャープなものとは言い難い。 とはいえローレルSGXはホットな走りを狙ったものではないために事実上問題ないとも言えた。優雅に走るためのL20型エンジンのポテンシャルはかえって向いていたと言えるだろう。 インテリアもスポーティなものというよりは、大人の落ち着きを演出したもので、インパネにはウッド風のデザインを多用していたのもこのクルマの位置づけを表していると言える。 サスペンションは先代譲りのストラット/セミトレーリングアーム(セミトレ)式の4輪独立サスペンション(HTのみ)を採用した。特徴は優れた乗り心地だ。フロントのストラットはシンプルながらストロークが長く取れるためにもともと乗り心地を良くしやすい特性がある。 さらにリアのセミトレ式は、基本的な動きとして路面の突起を乗り越えた際にホイールベースが伸びる方向に動くことになり、乗り心地を重視した設定のローレルには最適なものと言えた。 昭和48(1973)年10月には、マイナーチェンジを受ける。グリルの形状により「ガメラ」の愛称も生まれた。このときにはパワーの余裕を得るために2.6L直6のL26エンジンを搭載した2600SGLを追加した。これはシングルキャブで140psという当時としてはかなりのハイパワーを発生した。グレードはセダン/HTともSGLの1グレードのみで4速/5速MTと3速ATが設定され価格は4速MTで120万円となっていた。 昭和50(1975)年9月には昭和50年排出ガス規制に対応するために、2.8LのL28を搭載することになる。同年10月にはL20エンジンが昭和50年排出ガス規制に適合する。さらにキャブレターを廃し電子制御(EGI)に変更したL20E型を追加した。 そして昭和51(1976)年にはこのL20E型エンジンが昭和51年排出ガス規定に適合して、高性能エンジン不遇の時代を乗り越えた。長きにわたった排出ガス対策の時代が終わりを迎えたと言えるだろう。 若者にも人気を博した2代目ローレルは、いわゆる「街道レーサー」風のモディファイでも良い素材?となり、賛否はあるものの人気車種であったのは事実と言える。 一時代を築いたローレルの基礎となったのがこの2代目のC130型であるのは間違いない。中でもSGXはゴージャスな装備と高性能をハイレベルで両立させた小粋なクルマだった。