荻原博子<紙の保険証>新規発行が12月で順次停止に。でも<マイナ保険証>は機械の不具合に備えたり、役所で更新しないと…私達はこの「不便さ」に慣れるしかない?
経済ジャーナリストの荻原博子さんが、お金に関するお得な情報をわかりやすく解説する新連載「トクする!荻原博子のマネーNEWS」。今回は「不便さに慣れるしかない?」です。(イラスト=さかがわ成美) 【写真】「持病持ち、高齢でも入れて保険料が安い」と語る保険に気を付けて!と話す荻原さん。その理由とは * * * * * * * ◆<紙の保険証>廃止で困るのは… 12月2日、紙の保険証の新規発行が順次停止されます。 自民党の総裁選までは、「期限が来ても納得しない人がいっぱいいれば、(現行保険証との)併用も選択肢として当然」と語っていた石破茂総理。 8月の調査によれば、患者の8人に7人が紙の保険証を使っているので、「期限が来ても納得しない人」はたくさんいるように思いますが、閣内や霞が関の抵抗で廃止は断行されそうです。 保険証の廃止で困るのは、通院時にかなり不便になりそうなこと。
◆こんな不便が 今までは、月に1回、窓口に保険証を出すだけでよかったのですが、これからは毎回「マイナ保険証」を読み取り機に置き、暗証番号の入力か顔認証が必要。 機械の不具合や停電などでマイナ保険証が使えない場合に備え、「資格情報のお知らせ」も一緒に持っていくか、資格申立書への記入と提出をしなくてはなりません。 現行の保険証には記載されている保険情報がないからです。「マイナ保険証」がない人は、今の保険証が切れたら「資格確認書」を提出する必要があります。 また、紙の保険証は、有効期限の前に新しいものを送ってきてくれますが、マイナ保険証は毎回、本人が役所に出向いて更新しないと使用不能に。 紛失した場合は再発行までに1ヵ月程度かかるし、顔写真は5年間変えられないので、子どもが成長して顔が変わると「顔認証」されない可能性もあり注意が必要です。
◆皆さんより大変になるのは… マイナ保険証で見られる医療情報は、1~3ヵ月前の古いもの。ですから、薬局などに行く時は、リアルタイムに飲んでいる薬が把握できる「お薬手帳」を持っていくほうが安全です。 そして実は、皆さんよりもっと大変になるのが病院。 今まで、保険証の事務処理は月に1回でよかったのですが、今後は毎回になり、しかも「マイナ保険証」、「顔認証のマイナ保険証」、「資格確認書」、「資格申立書」など、9種類の確認に対応しなくてはならない。 さらに、現在の読み取り機では来年から始まるスマホの「マイナ保険証」は読み取れないので、外付けの機械が必要。加えて、2026年以降は現在のカードとは別に「新マイナンバーカード」が出てくるので、これにも対応する必要が。そのため、人を増やさなくてはならないところも出てきそうです。 便利になるはずの「デジタル化」ですが、「マイナ保険証」では、不便になったと実感する人が多くなるように思います。 われわれはこの「不便さ」に、早く慣れるしかないのでしょうか。 (撮影=本社写真部)
荻原博子
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