東レ社員が「同僚の人生を映画に」と企画、山中有監督で映画賞受賞の快挙
米国アカデミー賞公認の「アジア最大級の国際短編映画祭」がある。「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA) 2024」だ。 その公式部門として世界の動画マーケターが注目するのが「BRANDED SHORTS」。企業や自治体がブランディングを目的として制作したショートフィルム(ブランデッドムービー)を応募するものだ。 そして今年も、本部門の祭典「BRANDED SHORTS 2024」が開催され、世界からエントリーされた747作品の中から各部門のノミネート作品が選出され、優秀賞やアワードが発表された。 本稿では翻訳家の鹿田昌美氏に、「Branded Shorts of the Year」ナショナル部門*を受賞した「ストレートパス Straight Path」(東レ)について以下ご寄稿いただいた。 *「ナショナル部門」は、審査員が8つの視点(必然性、認識変化力、シェアラブル、メッセージ力、視聴維持力、オリジナリティ、時代性、視聴後の想起力)から「最も優れている」と判断した国内の作品に授与される賞である。 ■山行での最重要は「水を何リットル持っていくか」 夏になると家族でテントをかついで登山をする。ボーイスカウトのリーダーだった父親に幼少期からアウトドアのいろはを徹底的に叩き込まれた夫は、丁寧に山行計画を立てる。 最も重要なのは「水」を何リットル持っていくか、だ。水場の間隔は? 山小屋で水を得られる? すべてを自力でまかなうことを想定して、1人(体重と歩く時間によって変動する)何ミリリットル必要かをはじき出す。持ち水を節約するため、テント場の調理で使った鍋や食事に使った皿は、紙で汚れをふき取って次回も使う(紙は当然、持ち帰る)。スープは残さず飲み切る。ほとんどの山小屋に風呂はないので、下山後の立ち寄り湯で体を流し、「生きている(生かされている)」と実感する。安全な水がなければ私たちは生きていけない、ということを思い出す。 「水」は蛇口をひねると出てくる。でも、そうではない経験をしている人が、世界中に大勢いることも知っている。頭ではわかっていても、自分が経験したり、悔しい!という感情を抱いたりしないと、実感をもって何かしらのアクションを起こすのは、多くの人にとって、忙しい日常においては難しいかもしれない。