当時のホンダレーシングテクノロジーの結晶とも言えるVT250F、そのエンジンは35年継承され続けた
35年使われたエンジンは、ホンダの技術遺産だ
超高性能バイクとして登場したVT250Fだが、コンパクトにまとめられた車体や扱いやすさから多くの女性ライダーに選ばれることになる。この女性ライダー+VTというのはこの後に巻き起こる一大バイクブームの起因の一つでになったと言って良いだろう。初心者からベテランまでを満足させる性能を持ったVTは、1982年から1984年の3年間ベストセラーを獲得するに至ったのである。 1984年に2型へとフルモデルチェンジが行なわれ、角パイプフレームを採用。エンジンは最高出力40PS/12500rpm、最大トルク2.3kgm/11000rpmとさらに高回転・高出力化され、フレームマウントのハーフフェアリングが装備された。また、バイク便御用達となった、カウルレスのVT250Zもラインナップされた。 1986年には3型が登場し、エンジンはストロークを0.1mm伸ばして249ccされ、43PS/12500rpmというVT系エンジン最強のスペックとなった。フレームはそれまでのダブルクレードルからダイヤモンドに変更され、クラッチはそれまでの油圧から一般的なワイヤータイプへと変更された。この時代においてVTはスタンダードバイクとしての進化を始めており、シート高が下げられたり車体色にピンク系のものが用意されるなどかなり女性を意識した戦略がされている。この年代にカウルレスモデルは、VTZ250として独立車種となっている。また、それとは別に、3型の販売時期と被る1988年には、F1レーサーアイルトン・セナをCMに使用し、革新的なアルミキャストフレームを採用したVT250スパーダがラインナップに加わっている。 1991年には大型のハーフフェアリングを装着したゼルビスが登場、このゼルビスには中低速域を重視した最高出力36PS/11000rpm、最大トルク2.6kgm/8500rpm仕様のエンジンが搭載された。カウルやボディデザインはシャープなスポーツツアラー的なものに変更され、タンク容量は16Lた大型化された。また、シート下に大容量のユーティリティスペースが設けられ、荷かけフックを充実させるなどれるなどツアラー的要素が強められている。 1998年にはトラスフレームを採用したネイキッドスポーツ、VTRへとフルモデルチェンジ。このVTRに搭載されたエンジンは、1986年にストロークが変更されたものが基本となっている。このVTRはモデルチェンジを重ねながら2017年まで製造されており、そのエンジンは1982年に誕生した初代モデルから数えて35年も使用されたことになる。NRのレプリカとして誕生したこのエンジンは、VT系以外にもVツインマグナなどにも使用され、ホンダの技術遺産とも呼べる名エンジンであったと言えるだろう。
VT250F主要諸元(1982)
・全長×全幅×全高:2000×750×1175mm ・ホイールベース:1385mm ・シート高:780mm ・車両重量:162kg ・エジンン:水冷4ストロークDOHC4バルブV型2気筒248cc ・最高出力:35PS/11000rpm ・最大トルク:2.2㎏m/10000rpm ・燃料タンク容量:12L ・変速機:6段リターン ・ブレーキ:F=ディスク(インボード)、R=ドラム ・タイヤ:F=100/90-16、R=110/80-16 ・価格:39万9000円(当時価格)
後藤秀之