<解説>小野憲史のゲーム時評 「ゲーム批評」の思い出(8) アンケートハガキの思い出
そのうち、読者コーナーに掲載するだけではなく、ハガキに書かれたメッセージを有効利用したいという話が出るようになった。最初は特集の穴埋め企画(取材がキャンセルになった、記事が没になったなど、毎号なんらかの形でページの帳尻を合わせる必要があった)として、読者投稿を見開きで紹介したのが始まりだったように思う。これが意外とアンケートで好評だった。これに気を良くして、誌面の余白にも読者メッセージを載せるようになった。掲載数が増えると、そのぶん読者アンケートの回収率も増えて、投稿内容もおもしろいものが増えていった。
これが長じて、最終的には読者アンケートの内容だけで編集された別冊まで出版された。これが「投稿ゲーム批評 読者あっての本ですから」だ。当時「ファンロード」をはじめとして、読者投稿だけで編集された雑誌があり、人気を博していたことから生まれたアイデアだ。原稿料を支払う必要がなく、制作費を抑えられたので、1~2年に1冊ずつ、全4冊が出版された。バカ売れするような内容ではなかったが、堅く売れる商材として会社からはありがたがられた。それにしても、よく考えたものだと思う。今なら炎上の可能性もあるが、当時は著作権に関する読者からのツッコミもなかった。
一方で読者のニーズを読み損ねたこともあった。雑誌のキャッチコピーを変えた瞬間、批判のメッセージが大量に来たのは一例だ。創刊以来、「ゲーム批評」のタイトル上には、「OUR OPINIONS!」というキャッチコピーが印刷されていた。これを自分が編集長になったタイミングで、特集の内容を踏まえた一行コピーに変えた。これが大不評で、自分の退職後に元に戻された。他に、あれもこれもと誌面を欲張った結果、ページが足りなくなり、読者コーナーを減らして全体の調整をとったこともあった。そうこうするうちにアンケートハガキの回収数が減少し、あわてて読者コーナーのテコ入れを行うハメになった。