渋すぎる名画も「ファミコン化」…80年代日本映画はファミコンでどうゲーム化されたのか
■ムツゴロウさんらしい動物満載の世界観にほっこり…『子猫物語』
動物研究家のみならず、小説家、エッセイスト、はてはプロ雀士といったさまざまな分野で活躍した畑正憲さん。「ムツゴロウさん」の愛称でおなじみの彼だが、実は監督・脚本を手掛けた映画作品がある。それが、1986年に公開された『子猫物語』だ。 本作は茶虎の牡猫・チャトランを主人公とした冒険映画で、パグ犬のプー助や熊、狐、アライグマといった数々の動物たちが登場し、物語を彩っていく。大ヒットを記録した本作は、日本だけでなく、世界でも高い評価を受けた。 そんな本作は映画公開の同年、ポニーキャニオンよりファミコンのディスクシステムでゲーム作品として登場。 ゲーム版は原作の世界観を踏襲した横スクロールアクションとなっており、プレイヤーは主人公の子猫・チャトランを操作し、理想の恋人・シロ子を目指して進んでいくこととなる。 操作自体は移動とジャンプが主体となるオーソドックスなものだが、所持している「卵」を下に落として相手を攻撃したり、特殊な卵を揃えることで友達のプー助が助けに来てくれたりと、オリジナル要素も満載だ。 ほのぼのした空気のゲームではあるものの、敵に触れてしまうと即ワンミスとなってしまうため、意外にも作品の難易度は高め。 ゲーム内の原作再現もさることながら、説明書には原作映画のワンシーン画像が使われていたりと、まさにチャトランの大冒険を追体験できる一作となっていた。
■後の名作にも通ずる骨太なホラー作品…『スウィートホーム』
1989年に公開された『スウィートホーム』は、亡くなった画家の屋敷に取材で入り込んだテレビクルーたちが、悪霊によって次々に命を奪われていくホラー映画だ。 薄暗い屋敷という閉ざされた空間の不気味さや、襲い来る悪霊のおどろおどろしさ、犠牲となっていく人々のゴア表現など、ホラーの醍醐味が詰め込まれた一作となっている。 そんな本作は映画公開同年にカプコンよりファミコン版ゲームが発売されているのだが、そのジャンルはまさかのRPGだった。 プレイヤーは屋敷に閉じ込められたテレビクルーのうち、3人を選んでパーティを結成し、屋敷の脱出を目指し突き進んでいく。 屋敷のなかでは襲い来る怪異たちと戦闘しながら探索を続け、ギミックを解きながら先へ進んでいくのだが、キャラクターごとの個性や特徴を把握し、その場その場で適切な組み合わせを選んでいくことがポイントとなる。 閉鎖的なシチュエーションがゆえにアイテムや武器も有限。常に限られたリソースをどう活かすかを、シビアに考え行動していく必要があるのだ。 もちろん、各所で繰り広げられる恐怖演出も原作映画さながらにプレイヤーを震え上がらせてくれる。効果音やBGM、画像の演出が巧みに絡み合い、呪われた屋敷のおぞましい空気感を存分に表現している。 漠然とプレイしているだけではクリアできない独特のゲーム性は、同社がのちに発売する『バイオハザード』シリーズにも近しいものがあり、本作で培われたものが後の名作ホラーにもしっかりと継承されたのかもしれない。 RPG作品として、そして原作の世界観を再現したホラー作品としても、実にクオリティの高い骨太な一作といえるだろう。 さまざまな作品を原作に据えたファミコンゲームが登場するなか、日本映画の世界観を取り入れた作品というのはなかなか珍しいかもしれない。アドベンチャーやアクション、RPGと、原作を追体験するためのジャンルも作品ごとに違っており、実に面白い。 当時はまだまだハードの性能が低いなか、それでもドット絵や音楽、細かな演出の数々で原作映画の“味”を再現しているのは、開発側の手腕が光る点だろう。
創也慎介