2025年を見据えたF1ドライバー”移籍バトル”……ハミルトンが引いた引き金を、次に動かすのは誰か?
メルセデスはルーキードライバーを起用するのか?
メルセデスの空いているシートは、これまでのチームの実績を考えれば、どんなドライバーにとっても魅力的なモノと言えるだろう。しかしチームが最も注目しているのは、秘蔵っ子とも言えるアンドレア・キミ・アントネッリだ。 アントネッリは2022年にドイツとイタリアのF4でチャンピオンとなり、2023年はフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権を制覇。FIA F3を飛ばし、今季はいきなりFIA F2に参戦することとなった。所属チームはトップチームのプレマである。アントネッリがこのF2でいきなりチャンピオンを争うような速さを見せれば、メルセデスはハミルトンの後任として彼を大抜擢する可能性もあるだろう。 ただ、シーズンが始まってしばらく経たなければ、それを判断するのは難しいだろう。つまりメルセデスとしては、時間が欲しいというわけだ。 メルセデスにとってのプランBは、アントネッリをいきなりメルセデスで起用するわけではなく、他のチームからF1デビューさせることだろう。この場合は、ウイリアムズがその最有力候補となる。実際ジョージ・ラッセルも、まずはウイリアムズからF1デビューし、そこで実績を残してメルセデス昇格のチャンスを掴んだ。 ただウイリアムズとしても独自の意向があるため、たとえメルセデスがそれを希望したとしても、叶わない可能性もある。
レッドブルのふたつ目のシートはどうなる?
レッドブルのふたつ目のシートの候補となるドライバーには事欠かない。 チームにとっては、セルジオ・ペレスを起用し続けるのが最優先ということになるだろう。もしペレスが今季、期待通りのパフォーマンスを発揮することができなかったとしても、複数の候補がいる。 レッドブルの傘下であるビザ・キャッシュアップRBには、ダニエル・リカルドと角田裕毅がいるし、リザーブドライバーのリアム・ローソンもいる。またレッドブルは、かつてチームに所属していたアレクサンダー・アルボンを呼び戻すことも検討しているとも言われる。 ただチームにとっての喫緊の課題は、従業員に対する”不適切行為”があったとして告発されたクリスチャン・ホーナーの処遇であり、将来のドライバー問題に対処するのはそれが解決した後ということになろう。 アストンマーティンは、フェルナンド・アロンソとの契約延長を望んでいることを公言して憚らない。アロンソ本人もアストンマーティンが優先だと明言しており、その可能性は高そうだ。ただアロンソには、メルセデスが触手を伸ばしているとの情報もある。 ■アルピーヌのいずれかが、チームを離れる可能性 アルピーヌのエステバン・オコンとピエール・ガスリーは、いずれもグランプリウイナーであり、他チームにとっても魅力的な選択肢と言えよう。アルピーヌは交渉が進んでいることを明らかにしており、オコンも早期に契約を延長する可能性を排除していない。 「早ければ早いほどいいね」 そうオコンは語った。 「だって今年は、多くのドライバーの去就が決まっていない。間違いなく大混乱になるだろう」 「僕はこのチームにとても満足している。ここで何年もレースしているからね。家族の一員みたいなものだよ。でも、F1はF1だ。何が起きるかは分からない」 ただオコンにとっては、決断を急ぎたくない理由がひとつある。それはオコンはメルセデス育成として育ってきたため、メルセデスのシートも選択肢のひとつに入る可能性があるからだ。 「僕はメルセデスと繋がりがあるというのも明らかだ。2015年以来、僕は長いことメルセデスのマネジメント下にある。もう育成ドライバーではないけど、まだ傘下にいるんだ。今後どうなるか見てみよう。でも現時点で僕は、アルピーヌと共にやらなければいけないこと、そして今後の計画に完全に集中している」 「そしてそれこそが、僕が集中しなければいけないことの全てだ。だってそれは、集中するのが大変なモノだからね。だからこそ僕には非常に競争力のあるマネジメントチームがいて、僕らがどこにいなければいけないかということについて、正しい選択をすることができる。だから僕は心配せず、コース上のことに集中している」 オコンのチームメイトであるガスリーも、ハミルトンの移籍により、色々なことが面白くなってきたと認める。 「多くの人にとって予想外のことだったよね。ドライバー市場と力関係、そして移籍市場全体に変化を及ぼした」 そうガスリーは言う。 「もちろん、僕は昨年からアルピーヌに加入しており、取り組んでいるプロジェクトについては理解している」 「僕は今年末で契約が終了するけど、話し合いが進められている。それだけだ。状況はかなりハッキリしていると思うけど、現時点ではこのマシンがどれほどの能力を発揮できるのかを知りたい。そして最終的にはトップを争うのが僕の目標だ」 「アルピーヌならそれは可能だと僕は信じている。僕は今28歳だけど、良い経験を積んできているし、まさに働き盛りの時期にいる。勝利を表彰台を目指して戦うよ」 来季に向け、ドライバー市場が激化するのではないかと尋ねられたガスリーは、「おそらくすでにそうなっていると思うよ!」と答えた。 「僕は自分の(マネジメント)チームにそういう仕事をしてもらっている。そして、僕はドライバーとして自分がやるべきことに集中している。自分がやりたいこと、パフォーマンス面でベストを尽くすこと、チームのためにベストを尽くすことのためには、それが必要なんだ」 「チームには1500人のスタッフがいて、昼夜問わずにマシンをできる限り良くするために働いている。そして僕の仕事は、それをグリッド上でできる限り表現することだ。だからそれに僕は焦点を当てている」