「日本もCIOは増えてきましたが…」CIO Lounge理事長が指摘する“日本企業の大きな課題”とは?
◆日本企業で深刻化する「SE不足」
矢島さんは、日本企業の大きな課題として“SE(システムエンジニア)不足”を挙げ、「現在、アメリカにはSEが440万人以上いると言われていますが、日本は140万人しかいない。しかも、そのうち30%しか企業に所属しておらず、70%がコンサル業やベンダー(販売業者)などの一方で、アメリカは440万人のうち7割が企業SE。これで日本企業がどうやって欧米に勝つのか……」と現状を吐露。 この話にパーソナリティの笹川は「それは意外……」と驚きつつ、なぜそうなってしまったのかと伺うと、「良い処遇がされてこなかったがゆえに、企業SEよりもベンダーなどのほうが収入も上がるので、そっちに流れてしまった。一方、アメリカでは早くからCIOが、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)などと同等レベルで企業の経営のなかに入ってきた。日本もCIOは増えてきましたが、そこまでに至りきれていない(のが現状)」と矢島さん。 さらには、CIOのポジションに就くために必要な能力やスキルについて、「重要なのは“幅広い経験”。技術は絶対に知っておかなければいけないけれど、それに加えて経営の悩みを自分が体感できるか、経営の悩みを経営者と分かち合えるかが大きいと思います」と語ります。 そのような人材をすぐに育成することは容易ではありませんが、矢島さんは「私はヤンマー時代に“全社員SE化”という方針を出したのですが、それぐらいSEが足りません。今からCIOを作り、デジタル人材を育成していても間に合わないし(世界には)勝てない。それならば、社員全員が“ITリテラシーを持ってSE化していくしかない”と、今は思っています」と持論を述べます。
◆ITデジタル化を進める若い世代へ…
続いて、ITデジタルにおける課題について矢島さんは「戦後の日本企業は、大きくなるにつれて縦割り組織ができて、企業全体を見ているのが社長だけになってしまった。でもITは、業務プロセスを横にどう連携するか、全体で情報データをどう使うか、という“縦”ではなく“横”の話。しかし、日本は“横串”を刺せるような人材がなかなかいないので、ITも連携できない形になっています」と明かします。 この話を受け、笹川が「“情報をどう活用していくか”というときの“横串問題”は、日本全体で向き合っていかないと解消しないのかなと思いますが……解消するためには、どうしていくべきでしょうか?」と質問すると、矢島さんは「我々が企業からご相談を受けたとき、いつも“プロセスオーナー”“データオーナー”を設定しましょうと提唱しています。例えば、顧客情報は営業含め多くの方が使われますが、それを誰が責任を持って管理するのか。このときに、今までの職能の縦割り、事業の縦割りの人ではなく、そういう人をアサインしましょうと。そうすると、ITデジタルが進む会社が多いですね」と言います。 さらに、これからは自分の会社だけではなく業界全体の連携が重要だと言い、「例えば、会社の機械をいくら効率化しても、それを運び出すトラックが来ないと作業は止まってしまう。つまり“全体を誰が設計していくか”が、これから非常に難しい世界になる。先日、トヨタ自動車さんとNTTさんが、自動車の新しいテクノロジーを連携して進めていくことが発表されましたが、こういう“日本の全自動車メーカーが(新しいテクノロジーを)使えるように進めたい”というような思想がないと、なかなか進まないと思います」と今後の展望を語りました。 (TOKYO FM「DIGITAL VORN Future Pix」11月16日(土)放送より)