「顔面蒼白で、絶望の淵にいました」女王・安井友梨に襲い掛かった試練【特別手記#1】
「日本人だからできないのではなく、日本人だからできる」といつか証明したい、と諦めずに思い続けてきました。 なんとしても、今年こそ世界一へ! その気持ちがあまりに強くて、空回りしてしまったのか? 私に試練がまたも降り注ぐには、理由があるに違いない。神様がなにかを私に伝えようとしているんだ。でなければ、あまりに残酷すぎる。 受け入れられない目の前の現実を受け入れるために前を向き、奇跡を信じる以外の道はありませんでした。1000人いたら999人が大会出場をやめるだろう。 「絶対に無理だから、無理は禁物です」 「来年再び目指してみたら」 そんな言葉が周りから聞こえてきました。SNSを更新するどころか、見るのも開くことすらも嫌になり、卑屈になっていました。大会に出場するなんて、医師のみなさんが「絶対に無理」と言っているのに、病院を駆けずり回って5軒目も同じ診断。すぐに手術が必要とのことでした。 鈴木雅選手なら、どうするだろう!?ダメ元で聞いてみよう。藁にも縋る気持ちでした(以下、鈴木選手との会話)。 安井「ご無沙汰しています。 お忙しい中、申し訳ございません。今日、左足指基節骨を骨折してしまいました。一日も早く治したいと思っています。もし雅さんが、ご存知の良い整形の方がいらっしゃればと思い、御連絡させていただきました。救急で診察していただきました医師からは、手術を勧められていますが、9月9日のオールジャパンまで25 日しかなく、それ以外の方法がないかと思っております」 鈴木「お疲れさまです。手術ってことは複雑骨折ですか? 3つに割れてる、どうしても手術したくない場合はセカンドオピニオンはありですね。肩、肘ならわかりますが、足部になると専門医の方がよいと思います。ちなみに母趾ですか? いま多方面から整形外科医を聞いてます」 「明日診てもらえそうですが、いかがでしょうか? 松尾智次という医師です。場所は御茶ノ水の順天堂医院になります」 そうして、骨折してわずか2日後に、鈴木さんから紹介された順天堂足疾患センターへと辿り着くことができました。幾つもの病院を駆けずり回って6軒目にして、ついに初めて手術をしないで大会を目指すための治療を提案してくださいました。 5軒の病院を回り、どこも手術を勧められましたが、鈴木さんが紹介してくださった順天堂医院においては手術をせずに大会を目指す治療で寄り添ってくださいました。雅さんが今回病院や医師の方をご紹介くださらなかったら、到底大会には出られなかったんです。本当に力を貸していただきました。心から感謝しております。
文:安井友梨